お役立ちコラム 2025.01.08
太陽光発電投資の利回りと注意点
昨今、再生可能エネルギーへの注目が高まっている中で、太陽光発電投資に関心を寄せる人が増えています。
実際に太陽光発電投資を始める前に、気になるのが利回りの問題ですよね。
一般的に、太陽光発電投資は高い利回りが期待できると言われていますが、具体的にどのくらいなのでしょうか。
また、高い利回りを実現するためには、どのような点に注意が必要なのでしょうか。
この記事では、太陽光発電投資の利回りについて詳しく解説するとともに、投資を成功させるためのポイントと注意点についてもお伝えします。
太陽光発電投資を検討している方はもちろん、すでに投資を始めている方にとっても、有益な情報が満載です。
ぜひ、最後までご一読ください。
目次
太陽光発電投資の利回り
太陽光発電投資を始める上で、最も気になるのが利回りですよね。
一口に利回りと言っても、さまざまな計算方法があります。
ここでは、太陽光発電投資における利回りについて、詳しく解説していきましょう。
表面利回りと実質利回りの違い
太陽光発電投資の利回りを語る上で、表面利回りと実質利回りの違いを理解することが重要です。
表面利回りとは、初期投資額に対して、年間でどれだけの売電収入が得られるかを表す数値です。
一方、実質利回りは、表面利回りから、投資にかかる諸経費(保険料、メンテナンス費用、税金など)を差し引いた実際の利益の割合を指します。
投資の収益性を正確に判断するためには、実質利回りを把握することが欠かせません。
利回りの計算方法
では、太陽光発電投資の利回りは、具体的にどのように計算すればよいのでしょうか。
ここでは、現金購入とローン利用の場合に分けて、解説します。
現金購入の場合
現金購入の場合、利回りは以下の計算式で求められます。
【現金購入時の利回り計算式】
利回り(%)= 年間売電収入 ÷ 初期投資額 × 100
例えば、初期投資額が1,000万円で、年間の売電収入が100万円だとすると、利回りは以下のように計算できます。
利回り(%)= 100万円 ÷ 1,000万円 × 100 = 10%
この場合、表面利回りは10%ということになります。
ローン利用の場合
ローンを利用する場合、ローンの金利や返済期間を考慮して、利回りを計算する必要があります。
具体的には、以下の計算式を用います。
【ローン利用時の利回り計算式】
利回り(%)= (年間売電収入 – 年間ローン返済額) ÷ 自己資金 × 100
ここで、年間ローン返済額は、ローンの元金と金利の合計額を表します。
仮に、自己資金が300万円、ローン額が700万円(金利2%、返済期間15年)、年間の売電収入が100万円だとすると、利回りは以下のように計算できます。
年間ローン返済額 = 58.8万円(元金46.7万円 + 金利12.1万円)
利回り(%)= (100万円 – 58.8万円) ÷ 300万円 × 100 = 13.7%
ローンを利用することで、自己資金を少なくして高い利回りを得ることができます。
ただし、金利変動のリスクや、返済期間が長期にわたることも考慮に入れる必要があるでしょう。
利回りの推移と現状
太陽光発電投資の利回りは、FIT制度(固定価格買取制度)の影響を大きく受けます。
FIT制度が始まった2012年度は、10kW以上の設備で1kWhあたり40円の買取価格が設定されました。
その後、買取価格は年々下がり続け、2022年度では10kWを超える設備に限り、11~12円程度にまで下落しています。
それでも、太陽光発電投資の利回りは、他の投資と比べて高水準を維持しています。
現在でも、適切な立地条件や設備を選べば、8%前後の利回りを実現できる物件が存在します。
ただし、FIT制度は2032年度に終了することが予定されているため、制度の変化にも注視が必要です。
FIT制度の動向を踏まえつつ、長期的な視点で投資先を選ぶことが重要だと言えるでしょう。
太陽光発電投資のメリットとデメリット
太陽光発電投資には、他の投資にはない独自のメリットがある一方で、デメリットも存在します。
ここでは、太陽光発電投資の主なメリットとデメリットについて、詳しく見ていきましょう。
メリット
まずは、太陽光発電投資の魅力的なメリットから紹介します。
FIT制度による売電収入の保証
太陽光発電投資の最大のメリットは、FIT制度(固定価格買取制度)による売電収入の保証です。
FIT制度とは、再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定期間、固定価格で買い取ることを国が約束する制度です。
この制度により、太陽光発電で発電した電気は、10年間(10kW以上)または20年間(10kW未満)、一定の売電価格で買い取られることが保証されます。
安定した収入が見込めるため、長期的な投資計画を立てやすいというメリットがあります。
節税効果
太陽光発電投資には、節税効果もあります。
太陽光発電設備を設置すると、その年の所得から一定額を控除できるグリーン投資減税が適用されます。
また、太陽光発電による収入は、事業所得や不動産所得として申告することができます。
必要経費を差し引いた額に対してのみ課税されるため、収入に対する税金負担を抑えることが可能です。
土地の有効活用
太陽光発電投資は、遊休地や休耕地といった、有効活用されていない土地を活用できるというメリットもあります。
太陽光発電設備を設置することで、これまで収益を生まなかった土地が、新たな収入源になります。
また、太陽光パネルの下で、営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)を行えば、農業との両立も可能です。
土地の有効活用は、土地所有者にとって大きなメリットと言えるでしょう。
デメリット
一方で、太陽光発電投資にはデメリットもあります。
主なデメリットとしては、以下の3点が挙げられます。
初期投資の高さ
太陽光発電投資の最大のデメリットは、初期投資の高さです。
太陽光発電設備の設置には、土地の取得費用や造成費用、パネルや周辺機器の購入費用など、多額の初期投資が必要になります。
投資規模にもよりますが、数千万円から数億円規模の資金が必要なケースも珍しくありません。
初期投資の高さは、投資家にとって大きなハードルになります。
天候リスクと出力制御
太陽光発電は、天候に大きく左右されるという特性があります。
晴天の日が続けば発電量は増えますが、雨や曇りの日が続くと発電量が落ち込んでしまいます。
また、自然災害によって設備が損傷を受けるリスクもあります。
さらに、電力需給バランスを調整するための出力制御も、デメリットの1つです。
太陽光発電の導入が進み、供給量が需要を上回る状況になると、電力会社から発電事業者に対して、発電量の抑制が求められる場合があります。
天候リスクと出力制御は、安定した売電収入を得るうえでの障壁となります。
FIT期間終了後の不確実性
現在のFIT制度は、2032年度に終了することが予定されています。
FIT期間終了後は、売電価格が大幅に下がることが予想されます。
太陽光発電事業者は、FIT期間終了後も事業を継続するために、新たな収益モデルを構築する必要があります。
例えば、発電した電力を地域新電力に販売したり、蓄電池を導入して電力の自家消費を進めたりするなどの対策が考えられます。
しかし、FIT期間終了後の事業環境は不透明で、将来の収益見通しが立てづらいのが現状です。
FIT期間終了後の不確実性は、太陽光発電投資の大きなデメリットと言えるでしょう。
利回りの高い太陽光発電投資の選び方
高い利回りを実現するには、太陽光発電投資物件の選び方が重要になります。
ここでは、利回りの高い太陽光発電投資物件を選ぶためのポイントを、詳しく解説していきましょう。
立地条件の重要性
太陽光発電の利回りを左右する最も重要な要素は、立地条件です。
立地条件が良いほど、より多くの発電量を見込むことができます。
逆に、立地条件が悪ければ、発電量が伸び悩み、利回りも低くなってしまいます。
では、具体的にどのような立地条件に注目すべきでしょうか。
日照時間と自然災害リスク
利回りに直結する立地条件の要素として、日照時間の長さと自然災害リスクの低さが挙げられます。
日照時間が長いほど、太陽光パネルに当たる光の量が多くなるため、発電量が増えます。
日本国内では、年間の日照時間が長い地域は、以下のようになっています。
【表】日本国内の年間日照時間ランキング
- 山梨県(2,291時間)
- 愛知県(2,277時間)
- 静岡県(2,273時間)
- 岐阜県(2,270時間)
- 三重県(2,268時間)
一方で、自然災害リスクの高い地域は避けるべきです。
特に、台風の常襲地域や豪雪地域での太陽光発電投資は、リスクが高いと言えます。
太陽光パネルや架台が損傷を受ける可能性が高く、修繕費用がかさむ恐れがあるからです。
立地条件の選定では、日照時間の長さと自然災害リスクの低さを、総合的に判断することが重要です。
設備の品質とメンテナンス
太陽光発電投資の利回りを高めるには、設備の品質とメンテナンスにも注目が必要です。
安価な設備を導入すれば初期費用を抑えられますが、発電効率が低く、故障のリスクも高くなります。
一方、高品質な設備を導入すれば、初期費用は高くなりますが、発電効率が高く、メンテナンス費用を抑えられます。
長期的な視点で考えると、高品質な設備を選ぶことが利回りの向上につながります。
また、定期的なメンテナンスを欠かさないことも、利回りを高めるうえで欠かせません。
パネルの清掃や、パワーコンディショナーの点検などを定期的に行うことで、発電効率の低下を防ぎ、設備の長寿命化を図れます。
設備の品質とメンテナンスへの投資は、長期的な利回りの向上に寄与すると言えるでしょう。
過去の出力制御の実績確認
太陽光発電投資では、電力会社による出力制御の実績も確認しておく必要があります。
出力制御とは、電力需給のバランスを保つために、電力会社が太陽光発電所の発電量を制限することを指します。
出力制御が頻繁に行われる地域では、発電量が減少し、利回りが低下してしまいます。
投資物件を選ぶ際は、過去の出力制御の実績を確認し、出力制御リスクの低い物件を選ぶことが重要です。
各電力会社は、出力制御の実績データを公表しています。
物件の所在地を管轄する電力会社の実績を確認し、出力制御の多寡を把握しておきましょう。
設置・ランニングコストの把握
利回りを正確に把握するには、設置・ランニングコストを適切に見積もることが欠かせません。
太陽光発電投資の設置・ランニングコストには、以下のような項目があります。
【箇条書き】太陽光発電投資の設置・ランニングコスト
- 土地の取得費用
- 造成工事費用
- 設備の購入費用
- 設置工事費用
- 保険料
- 固定資産税
- 修繕費用
- 廃棄費用
これらのコストは物件によって大きく異なるため、投資物件ごとに詳細な見積もりが必要です。
特に、土地の取得費用と造成工事費用は、立地条件によって大きく変動します。
山間部や傾斜地など、条件の悪い土地では、これらの費用が高額になる可能性があります。
また、保険料や修繕費用、廃棄費用など、ランニングコストの見積もり額が過小評価されているケースも少なくありません。
設置・ランニングコストを適切に見積もり、利回りを正確に把握することが、太陽光発電投資の選定では重要です。
投資物件の選定では、これらのコストを考慮に入れ、長期的な収支見通しを立てることが求められます。
太陽光発電投資の注意点
太陽光発電投資は、高い利回りが期待できる一方で、いくつかの注意点があります。
ここでは、太陽光発電投資を行う際に、特に気をつけるべきポイントについて解説します。
2024年以降の新規投資の課題
2024年以降、太陽光発電投資の環境は大きく変化することが予想されています。
新規投資を検討する際は、以下の2つの課題に注意が必要です。
売電価格の下落
FIT制度の売電価格は、年々下がり続けています。
2012年に始まったFIT制度では、10kW以上の設備の売電価格は1kWhあたり40円でしたが、2022年度には11~12円程度まで下落しました。
今後も売電価格の下落傾向は続くと予想されるため、新規投資の収益性は厳しさを増しています。
投資判断の際は、売電価格の推移を注視し、長期的な収支見通しを立てることが重要です。
低圧全量売電の規制
2022年4月以降、低圧(50kW未満)の太陽光発電所については、発電した電力の全量を売電することができなくなりました。
新規に低圧太陽光発電所を設置する場合、一定割合を自家消費しなければならない点に注意が必要です。
特に10kW以上50kW未満の設備の場合、自家消費率が30%以上、かつ、年間の売電量が1,000kWh未満の企業に限り、全量売電が認められます。
低圧全量売電の規制は、新規投資の収益性に大きな影響を与えるため、十分な検討が必要です。
中古物件購入時の留意点
新規投資のハードルが高まる中、中古の太陽光発電物件への投資が注目されています。
ただし、中古物件の購入には、以下のような留意点があります。
残存FIT期間の確認
中古物件の多くは、すでにFIT制度の認定を受けており、高い売電価格が適用されています。
しかし、FIT制度の適用期間は20年間に限られているため、残存期間を確認することが重要です。
残存期間が短い物件は、高い売電価格を享受できる期間が限られているため、投資リターンが限定的になります。
物件の選定では、残存FIT期間を考慮に入れ、長期的な収支見通しを立てることが求められます。
設置地域の特性チェック
中古物件の選定では、設置地域の特性もチェックが必要です。
特に、日照時間や積雪量、台風などの自然災害リスクは、発電量や修繕費用に大きな影響を与えます。
事前に設置地域の気象データをチェックし、発電量の予測と、投資リスクの評価を行うことが重要です。
また、周辺環境の変化にも注意が必要です。
近隣に高層建物が建設されれば日陰になるリスクがありますし、土地の開発が進めば、景観の変化で苦情が発生するリスクもあります。
中古物件の購入では、設置地域の特性と、周辺環境の変化リスクを見極める必要があります。
投資効果のシミュレーションの重要性
太陽光発電投資では、投資効果のシミュレーションが欠かせません。
シミュレーションでは、発電量や売電収入、投資回収年数などを試算し、投資判断の材料とします。
シミュレーションを行う際は、以下のような点に注意しましょう。
【箇条書き】投資効果シミュレーションの注意点
- 日射量データは信頼できるソースを使う
- パネルの経年劣化を考慮する
- 出力制御のリスクを織り込む
- 保険料や税金、メンテナンス費用を適切に見積もる
- 売電価格の変動リスクを考慮する
これらの点を考慮に入れ、現実的な前提条件に基づいたシミュレーションを行うことが重要です。
また、シミュレーション結果は機器の選定や、資金計画の策定など、具体的な意思決定に活用することが求められます。
投資判断の際は、シミュレーション結果を鵜呑みにせず、幅を持った見通しを立てることが肝要です。
投資効果のシミュレーションは、太陽光発電投資の成否を左右する重要なプロセスです。
シミュレーションの精度を高め、適切な投資判断につなげることが、太陽光発電投資では欠かせません。
まとめ
太陽光発電投資は、再生可能エネルギーへの注目度が高まる中、注目を集める投資商品の1つです。
FIT制度による売電収入の保証や、節税効果、土地の有効活用といったメリットがある一方で、初期投資の高さや、天候リスク、出力制御といったデメリットもあります。
利回りの高い太陽光発電投資を行うためには、立地条件の選定が何より重要です。
日照時間が長く、自然災害リスクが低い地域を選ぶことが、高い利回りを実現するための鍵となります。
また、設備の品質とメンテナンスにも注意が必要です。
高品質な設備を選び、定期的なメンテナンスを行うことで、長期的な利回りの向上が期待できます。
一方で、太陽光発電投資には注意点もあります。
特に2024年以降は、売電価格の下落や、低圧全量売電の規制といった課題があります。
新規投資を検討する際は、これらの点を十分に考慮する必要があります。
中古物件の購入でも、残存FIT期間の確認や、設置地域の特性チェックが欠かせません。
投資判断の際は、投資効果のシミュレーションが重要です。
発電量や売電収入、投資回収年数などを試算し、現実的な前提条件に基づいた見通しを立てることが求められます。
太陽光発電投資は、メリットとデメリット、注意点を十分に理解したうえで、長期的な視点に立って判断することが大切です。
適切な投資判断を行うためには、専門家のアドバイスを仰ぐことも有効でしょう。
太陽光発電投資の知識を深め、自身の投資目的や資金計画に合った物件を選ぶことで、再生可能エネルギーの普及に貢献しつつ、安定的な収益を得ることができるはずです。
この記事を書いた人
TRENDLINE編集部
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