お役立ちコラム 2026.02.10
太陽光パネルの電磁波は危険?公的見解と安心できる根拠を解説
「太陽光パネルから電磁波が出て体に悪いのでは?」──太陽光発電の導入を検討している方や、近くに太陽光発電設備ができた方から、こうした声が寄せられることがあります。
結論から言えば、太陽光発電システムから発生する電磁波は一般的な家電製品と同程度かそれ以下であり、国際的な安全基準を大きく下回っています。WHO(世界保健機関)をはじめとする公的機関も、通常の使用環境で健康に悪影響を及ぼす根拠はないとの見解を示しています。
本記事では、電磁波の基礎知識から太陽光発電における実測データ、公的機関の見解、そして不安を感じた場合の具体的な対策まで、順を追ってわかりやすく解説します。
目次
電磁波の基礎と誤解されやすいポイント

電磁波とは何か(電界・磁界・周波数)
電磁波とは、電界(電気の力が及ぶ空間)と磁界(磁気の力が及ぶ空間)が互いに影響し合いながら波のように空間を伝わるエネルギーのことです。太陽光に含まれる紫外線や赤外線、テレビやラジオで使われる電波、さらにはレントゲンのX線まで、波長や周波数が異なるだけで、すべて電磁波の一種にあたります。
電磁波の性質を左右するのが「周波数」です。周波数とは1秒間に波が振動する回数のことで、単位はHz(ヘルツ)で表されます。一般的な家庭のコンセントに流れる電気は50Hzまたは60Hzの「超低周波」に分類され、携帯電話やWi-Fiの電波は数百MHz〜数GHzの「高周波」に分類されます。
太陽光発電に関わるのは、おもにこの「超低周波」の領域です。周波数が低いほどエネルギーは小さく、高周波や放射線のように細胞を直接傷つける力(電離作用)は持っていません。ここが、原発事故などで問題になる「放射線」との決定的な違いです。
もう一つ押さえておきたいのは、電磁波の強さは発生源から離れるほど急激に弱まるという性質です。数十センチ離れるだけでも大幅に減衰するため、日常生活で問題になるほどの電磁波を浴び続けることは通常ありません。
日常生活で身近な電磁波の発生源
私たちは日常的にさまざまな電磁波に囲まれて生活しています。IH調理器やドライヤー、電気カーペット、スマートフォン、Wi-Fiルーターなど、電気を使う機器はすべて何らかの電磁波を発しています。
身の回りの家電が発する磁界の強さ(機器の近く)を見ると、IH調理器が約27μT(マイクロテスラ)、ヘアドライヤーが最大で約50μT、電気カーペットが10〜20μT程度というデータがあります(環境省「平成16年度 生活環境中電磁界に係る調査」報告書)。これらは長年にわたり家庭で使われてきたものですが、使用による健康被害は報告されていません。
また、地球自体も「地磁気」という自然の磁界を持っており、その強さはおよそ40〜50μTです。つまり、私たちは常に一定レベルの磁界の中で暮らしていることになります。太陽光発電の電磁波を考えるとき、こうした日常的な電磁波の存在を知っておくことが、冷静な判断の第一歩になります。
太陽光発電で電磁波が出る場所と強さ

電磁波が主に出るのはパワコン(理由)
太陽光発電システムは、太陽光パネル・接続箱・パワーコンディショナー(パワコン)・分電盤で構成されています。このうち、電磁波の発生源として注目すべきはパワコンです。
太陽光パネルが生み出す電気は「直流」です。直流は電流の向きが一定で時間的な変化がないため、変動する磁界(交流磁界)を生じません。パネル周辺には微弱な静磁界(直流磁界)が発生しますが、これは磁石が周囲に磁界をつくるのと同じ原理であり、健康上問題となるレベルではありません。
一方、パワコンは直流電力を家庭で使える交流電力(50Hz/60Hz)に変換する機器です。交流は電流の向きが周期的に切り替わるため、その過程で超低周波の電磁波(交流磁界)が発生します。これが「太陽光発電から電磁波が出る」と言われる主な正体です。
なお、接続箱やケーブル類からもわずかに磁界は生じますが、パワコンと比較すると非常に微弱であり、通常の設置環境で気にするレベルではありません。
発生強度の目安と家電・規制値との比較
実際にどの程度の電磁波が発生するのか、公的な測定データを確認しましょう。一般財団法人 電気安全環境研究所(JET)の電磁界情報センターが公表した実測結果によれば、事業用太陽光発電システム(出力数十kW)でも、0.2m離れた位置での最大値はパワコンが7.49μT、太陽光パネルが8.33μTでした。
住宅用システム(出力3〜5kW)の場合はさらに値が小さく、住宅用パワコンの最大値は4.26μTと報告されています。これは日本の規制値である200μTのわずか約2%にすぎません。
【太陽光発電と家電製品・規制値の磁界比較】
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発生源 |
磁界の強さ |
備考 |
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住宅用パワコン(5kW級) |
最大 4.26μT |
JET実測値(30cm) |
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事業用パワコン(数十kW) |
最大 7.49μT |
JET実測値(20cm) |
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太陽光パネル(静磁界) |
最大 8.33μT |
JET実測値(20cm) |
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IH調理器 |
約 27μT |
環境省調査 |
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ヘアドライヤー |
最大 約50μT |
環境省調査 |
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電気カーペット |
10〜20μT |
環境省調査 |
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地磁気(自然界) |
40〜50μT |
地球の自然磁界 |
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ICNIRP/日本の規制値 |
200μT |
公衆ばく露制限値 |
上の表からわかるように、住宅用パワコンの電磁波は規制値の約2%、日常的に使うIH調理器やドライヤーよりも低い値です。しかも、パワコンは壁面に設置されるのが一般的であり、人が密着するような使い方はしません。実際の生活空間では、距離の減衰効果により、さらに小さな値しか届かないことになります。
屋根上に設置される太陽光パネルについても同様です。パネルと居住空間の間には屋根材・天井・数メートルの距離があるため、室内に届く磁界は無視できるほど微弱になります。
健康影響の考え方と不安を減らす対策

公的機関の見解(WHO・IARC等の位置づけ)
電磁波の健康影響については、世界中の公的機関が長年にわたり研究・評価を重ねてきました。主要な見解を整理します。
**WHO(世界保健機関)**は、国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)のガイドライン値以下であれば健康被害は生じないとの立場を示しています。2007年に公表されたファクトシート No.322では、超低周波電磁界について「日常的なレベルのばく露で健康上の問題があるとする説得力のある科学的根拠はない」と結論づけました。
**ICNIRP(国際非電離放射線防護委員会)**は、人体への健康影響を防ぐための国際ガイドラインを策定する専門機関です。2010年に改定された最新ガイドラインでは、一般公衆の磁界ばく露制限値を50Hz・60Hzともに200μT(マイクロテスラ)と定めています。この値は、神経や筋肉に刺激が起こるレベルの5分の1という十分な安全マージンを取った数値です。
日本の規制は、このICNIRPガイドラインを採用しています。経済産業省は2011年に「電気設備に関する技術基準を定める省令」を改正し、電力設備から発生する磁界を200μT以下とする規制を導入しました。
**IARC(国際がん研究機関)**は、超低周波磁界を「グループ2B(人に対して発がん性があるかもしれない)」に分類しています。一見すると不安を感じる表現ですが、これはコーヒーや漬物と同じグループです。「発がん性がある」と断定されたわけではなく、完全に否定もできないという段階の評価であり、通常の生活環境で心配するレベルではありません。
電気学会も1998年の報告書で「通常の居住環境における電磁界が人の健康に影響を与えるとはいえない」と結論づけています。
これらの見解を総合すると、太陽光発電システムから発生する電磁波は規制値を大幅に下回っており、通常の設置・使用環境で健康被害が生じるとする科学的根拠はないと言えます。
気になる場合の対策(設置場所・距離・相談先)
科学的には安全と言えますが、「それでも気になる」という方のために、電磁波をさらに低減する具体的な方法をご紹介します。
パワコンの設置場所を工夫する
電磁波の影響をもっとも手軽に減らせるのが、発生源であるパワコンとの距離を確保することです。パワコンには屋内設置型と屋外設置型があります。電磁波が気になる場合は、屋外設置型を選ぶことで、居住空間への影響を最小限に抑えられます。屋内設置の場合でも、寝室やリビングなど長時間過ごす部屋から離れた場所に設置するのが有効です。
近隣への配慮も設計段階で行う
近隣住民から電磁波への不安を指摘されるケースもあります。パワコンの設置位置を隣家の居住スペースからできるだけ遠ざけるよう施工業者と相談しておくと、トラブルを未然に防ぎやすくなります。
ペースメーカー等の医療機器を使用している場合
心臓ペースメーカーや植込み型除細動器(ICD)などの埋め込み式医療機器を使用している方は、微弱な電磁波でも機器が誤作動する可能性がゼロではありません。パワコンに密着するような状況は避け、主治医や医療機器メーカーに相談のうえ、安全な距離を確認しておくと安心です。
専門機関に相談・測定を依頼する
一般財団法人 電気安全環境研究所(JET)が運営する「電磁界情報センター」では、電磁波に関する無料の電話相談を受け付けています。また、磁界測定器の無料貸出も行っているため、自宅の電磁波レベルを自分で確認することも可能です。客観的な数値を知ることが、不安を解消する最も確実な方法の一つです。
まとめ

太陽光発電システムにおける電磁波の発生源は主にパワコンですが、その強さは住宅用で最大4.26μT程度と、国際基準(200μT)のわずか約2%にすぎません。IH調理器やドライヤーなど日常的に使う家電と比べても低い水準であり、WHO・ICNIRP・経済産業省といった公的機関も、通常の使用環境で健康被害が生じる科学的根拠はないとしています。
IARCの「グループ2B」分類はコーヒーや漬物と同程度の位置づけであり、過度に恐れる必要はありません。
それでも不安を感じる場合は、パワコンを屋外設置にする・生活空間から離して設置する・電磁界情報センターに相談して実測するなど、具体的な対策をとることができます。正しい知識と客観的なデータをもとに、安心して太陽光発電を活用していただければ幸いです。
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