お役立ちコラム 2025.01.06
太陽光発電の初期費用と投資回収
近年、地球温暖化対策や電力の安定供給の観点から、太陽光発電システムの導入が進んでいます。
太陽光発電は、一度設置すれば、燃料費がかからず、長期間にわたって電力を生み出すことができるという大きなメリットがあります。
その一方で、初期費用がかかるというデメリットもあり、導入を検討する際には、費用対効果を見極めることが重要です。
本記事では、太陽光発電の設置費用の相場や内訳、費用を抑える方法、投資回収のシミュレーションなどについて、詳しく解説していきます。
太陽光発電の導入を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
適切な規模の太陽光発電システムを導入することで、長期的に見れば、電気料金の削減や売電収入によって、初期投資を回収することが可能です。
目次
太陽光発電の設置費用の相場
太陽光発電システムの設置費用は、住宅用と産業用で大きく異なります。
また、同じ住宅用でも、新築とリフォームでは費用に違いがあります。
ここでは、それぞれの設置費用の相場について見ていきましょう。
住宅用太陽光発電の設置費用相場
住宅用太陽光発電の設置費用は、経済産業省の調べによると、2022年の平均で1kWあたり26.1万円(新築)、28.1万円(既築)となっています。
仮に、一般的な家庭で多い4kWの太陽光発電システムを導入する場合、新築では約104万円、既築では約112万円が目安となります。
ただし、これはあくまでも平均値であり、導入する地域や住宅の条件、使用する機器などによって、費用は大きく変動します。
産業用太陽光発電(屋根・地上設置)の設置費用相場
産業用太陽光発電の設置費用は、住宅用に比べて安くなる傾向にあります。
2022年の調査では、10kW以上の低圧の産業用太陽光発電の平均設置費用は、屋根設置で1kWあたり28.7万円、地上設置で28.4万円となっています。
ただし、これは低圧の小規模なシステムの場合で、大規模な高圧システムになると、さらに安くなります。
高圧システムの場合、数百kWから数MWクラスの設備が一般的で、1kWあたりの設置費用は20万円を切ることもあります。
設置費用を左右する要因
太陽光発電システムの設置費用は、さまざまな要因によって変動します。
ここでは、主な要因について詳しく見ていきましょう。
太陽光発電システムの容量
太陽光発電システムの容量が大きくなるほど、必要な太陽光パネルの枚数が増えるため、設置費用は高くなる傾向にあります。
ただし、前述の通り、大規模なシステムになると、スケールメリットが働くため、1kWあたりの単価は安くなります。
容量の選定は、電力需要や設置スペース、予算などを総合的に考慮して決める必要があります。
新築とリフォームの違い
新築住宅に太陽光発電システムを導入する場合と、既存の住宅にリフォームで導入する場合とでは、設置費用に違いがあります。
一般的に、新築の方が費用を抑えられる傾向にあります。
これは、新築の場合、太陽光発電システムの設置を建築工事に組み込むことができるため、足場の設置などの付帯工事が不要になるからです。
一方、リフォームの場合は、既存の屋根に太陽光パネルを設置するための専用の工事が必要となり、その分、費用が高くなります。
ただし、これはあくまでも一般論で、新築でも屋根の形状や向きによっては、特殊な工事が必要になるケースもあります。
設置費用を正確に把握するためには、実際に施工業者に現地調査をしてもらい、見積もりを取ることが重要です。
太陽光発電の設置費用の内訳
太陽光発電システムの設置費用は、大きく分けて機器費と工事費に分かれます。
機器費には、太陽光パネルやパワーコンディショナー、架台などが含まれ、工事費は、それらを設置するための電気工事や屋根工事などが含まれます。
ここでは、それぞれの費用について、もう少し詳しく見ていきましょう。
太陽光パネルの価格
太陽光パネルは、太陽光発電システムの中で最も重要な部分であり、設置費用全体の中でも大きな割合を占めています。
太陽光パネル1枚あたりの価格は、メーカーや種類、発電効率などによって異なりますが、大体2万円から5万円程度が相場です。
仮に、4kWのシステムを導入する場合、20枚から30枚程度のパネルが必要になるため、パネル代だけで40万円から150万円程度かかることになります。
ただし、近年は技術の進歩によって、高効率なパネルが安価で手に入るようになってきており、パネル代を抑えることが可能になっています。
パワーコンディショナーの価格
パワーコンディショナーは、太陽光パネルで発電した直流電力を家庭で使える交流電力に変換する機器です。
パワーコンディショナーの価格は、容量によって異なりますが、4kW程度の一般的な製品で20万円から30万円程度が相場となっています。
最近は、複数の太陽光パネルからの電力を一括で変換できるマルチストリング型のパワーコンディショナーも登場し、設置の自由度が上がっています。
架台の価格
架台は、太陽光パネルを屋根に固定するための部材です。
架台の価格は、屋根の形状や材質、パネルの設置方法などによって異なりますが、4kWのシステムで10万円から20万円程度が相場です。
屋根の強度が十分でない場合は、補強工事が必要になることもあり、その場合は費用が嵩むこともあります。
設置工事費
太陽光発電システムの設置工事費は、機器の設置だけでなく、電気配線や屋根の防水工事なども含まれるため、設置費用全体の中で大きな割合を占めます。
工事費は、建物の構造や屋根の形状、設置方法などによって大きく異なりますが、4kWのシステムで30万円から50万円程度が相場です。
また、足場の設置が必要な場合は、10万円から20万円程度の追加費用がかかることもあります。
蓄電池を併設する場合の追加費用
太陽光発電システムに蓄電池を併設すると、昼間に発電した電力を夜間に使うことができるため、自家消費率を高めることができます。
ただし、蓄電池を導入する場合は、別途費用がかかります。
蓄電池の価格は、容量によって異なりますが、4kWhから12kWhクラスの家庭用蓄電池で、100万円から200万円程度が相場です。
また、蓄電池を設置するための工事費も必要になります。
太陽光発電システムの設置費用の内訳(4kWの場合)
太陽光パネル:40万円~150万円
パワーコンディショナー:20万円~30万円
架台:10万円~20万円
設置工事費:30万円~50万円
蓄電池(オプション):100万円~200万円
以上のように、太陽光発電システムの設置費用は、機器費と工事費を合わせて100万円から300万円程度が相場となります。
ただし、これはあくまでも目安であり、実際の費用は、導入する地域や建物の条件、システムの規模などによって大きく異なります。
正確な費用を把握するためには、複数の施工業者から見積もりを取り、比較検討することが重要です。
太陽光発電の設置費用を抑える方法
太陽光発電システムの設置費用は、決して安いとは言えません。しかし、国や自治体の補助金を活用したり、初期費用0円プランを利用したりすることで、費用を大幅に抑えることができます。 ここでは、それぞれの方法について詳しく見ていきましょう。
国や自治体の補助金活用
太陽光発電システムの導入には、国や自治体からの補助金が用意されています。 国の補助金としては、「住宅ローン減税制度」や「グリーン住宅ポイント制度」などがあります。 住宅ローン減税制度では、太陽光発電システムを設置した住宅の住宅ローン残高の一定割合を、所得税から控除することができます。 また、グリーン住宅ポイント制度では、太陽光発電システムを設置した住宅に対して、商品や商品券と交換できるポイントが付与されます。
自治体の補助金は、自治体によって内容が異なります。 都道府県や市区町村によっては、太陽光発電システムの設置費用の一部を補助する制度を設けているところもあります。 自分が住んでいる地域の自治体のホームページなどで、補助金の有無や内容を確認しておくことが大切です。
初期費用0円プランの利用
太陽光発電システムを導入する際に、初期費用を抑えたい場合には、初期費用0円プランを利用するのも一つの方法です。 初期費用0円プランとは、太陽光発電システムを無償で設置してもらい、その代わりに、発電した電力を一定期間、電力会社に売電するというプランです。 初期費用がかからない分、売電収入は少なくなりますが、手持ちの資金が少ない場合には、有効な選択肢と言えます。
購入した場合との費用比較
初期費用0円プランを利用する場合と、自分で太陽光発電システムを購入する場合とでは、長期的な費用負担が異なります。 太陽光発電システムを購入する場合は、初期費用は高くなりますが、売電収入がすべて自分のものになります。 一方、初期費用0円プランを利用する場合は、初期費用はかかりませんが、売電収入の大部分を電力会社に支払う必要があります。
したがって、長期的な費用負担を考える場合には、それぞれのプランのメリットとデメリットを比較検討する必要があります。
月額固定費用や保険料、メンテナンス費用の確認
初期費用0円プランを利用する場合、月額の固定費用がかかることがあります。 この月額固定費用の金額や期間については、プランによって異なりますので、事前に確認しておく必要があります。
また、初期費用0円プランを利用する場合でも、保険料やメンテナンス費用がかかる場合があります。 保険料は、太陽光パネルの破損などに備えるためのものであり、メンテナンス費用は、定期的な点検や清掃などに必要な費用です。 これらの費用については、プランに含まれているかどうかを確認し、含まれていない場合は、別途負担する必要があります。
以上のように、太陽光発電システムの設置費用を抑えるためには、国や自治体の補助金を活用したり、初期費用0円プランを利用したりすることが有効です。 ただし、初期費用0円プランを利用する場合は、月額固定費用や保険料、メンテナンス費用などについても確認しておく必要があります。 自分の予算や長期的な費用負担を考慮して、最適なプランを選択することが大切です。
太陽光発電の投資回収シミュレーション
太陽光発電システムを導入する際には、初期費用の回収にどれくらいの期間がかかるのかを予測することが重要です。ここでは、発電量や売電収入、自家消費による電気料金削減効果などを試算し、投資回収年数の目安を立ててみましょう。また、固定買取期間終了後の選択肢についても考えてみます。
発電量と売電収入の試算
太陽光発電システムの発電量は、設置する地域の日照条件や設置方式、パネルの種類などによって異なります。一般的に、1kWあたりの年間発電量は、1,000kWh~1,400kWhといわれています。 仮に、4kWのシステムを導入した場合、年間4,000kWh~5,600kWhの発電量が見込めます。
2022年度の固定買取価格は、出力10kW未満の住宅用太陽光発電の場合、1kWhあたり17円です。したがって、4kWのシステムで年間4,000kWhを発電した場合の売電収入は、4,000kWh × 17円 = 68,000円となります。ただし、発電した電力をすべて売電するわけではないので、実際の売電収入はこれよりも少なくなります。
自家消費による電気料金削減効果
太陽光発電システムで発電した電力を自家消費することで、電力会社から購入する電力量を減らすことができ、電気料金の削減につながります。 仮に、4kWのシステムで年間4,000kWhを発電し、そのうち半分の2,000kWhを自家消費したとします。
電力量料金を1kWhあたり27円とすると、自家消費による電気料金の削減効果は、2,000kWh × 27円 = 54,000円となります。この削減効果は、売電収入とは別に、毎年得られる経済的メリットといえます。
投資回収年数の目安
投資回収年数は、太陽光発電システムの導入費用と、年間の売電収入および自家消費による電気料金削減効果から算出することができます。
仮に、4kWのシステムを導入する場合の費用を200万円、年間の売電収入を50,000円、自家消費による電気料金削減効果を54,000円とすると、年間の経済的メリットは、50,000円 + 54,000円 = 104,000円となります。
この場合の投資回収年数は、200万円 ÷ 104,000円 ≒ 19.2年となります。ただし、これはあくまでも目安であり、実際の投資回収年数は、導入費用や売電収入、自家消費量などによって変動します。
固定買取期間終了後の選択肢
現在の固定買取制度では、住宅用太陽光発電の固定買取期間は10年間となっています。固定買取期間終了後は、売電を継続するか、全量自家消費に切り替えるかを選択する必要があります。
売電継続か全量自家消費への切り替え
固定買取期間終了後も売電を継続する場合は、電力会社との個別契約により、売電価格が決定されます。 固定買取価格よりも安い価格となる可能性が高いため、売電収入は減少すると見込まれます。
一方、全量自家消費に切り替える場合は、発電した電力をすべて自家消費することになるため、電気料金の削減効果は大きくなります。 ただし、発電量が消費量を上回る場合は、余剰電力を無償で電力会社に提供することになるため、注意が必要です。
固定買取期間終了後の選択肢については、自家消費量や電力需要、売電価格の動向などを踏まえて、慎重に検討する必要があります。 必要に応じて、蓄電池の導入なども視野に入れながら、最適な方法を選択することが重要です。
以上のように、太陽光発電システムの投資回収年数は、発電量や売電収入、自家消費による電気料金削減効果などを試算することで、おおよその目安を立てることができます。ただし、実際の投資回収年数は、導入費用や立地条件、運用方法などによって大きく変動するため、シミュレーションはあくまでも参考値として捉えることが大切です。固定買取期間終了後の選択肢についても、長期的な視点に立って、慎重に検討していくことが求められます。
太陽光発電設置後のランニングコスト
太陽光発電システムは、一度設置すれば、長期間にわたって発電し続けてくれるため、ランニングコストが低いというメリットがあります。しかし、完全にメンテナンスフリーというわけではなく、定期的な点検や修理、パネルの清掃などが必要となります。また、鳥害対策や、将来的なパネルの撤去費用なども考慮しておく必要があります。ここでは、太陽光発電設置後のランニングコストについて、詳しく見ていきましょう。
メンテナンス費用
太陽光発電システムは、長期間の使用に耐えられるよう設計されていますが、定期的なメンテナンスが不可欠です。メンテナンスには、パネルの清掃や点検、インバーターの点検、配線の点検などが含まれます。
一般的に、メンテナンス費用は、システムの規模や設置場所、メンテナンス頻度などによって異なりますが、年間1万円~5万円程度が目安とされています。ただし、これはあくまでも目安であり、実際のメンテナンス費用は、契約内容や点検の頻度、修理の必要性などによって変動します。
メンテナンス費用を抑えるためには、定期的な清掃や点検を自分で行うことも有効です。ただし、専門的な知識が必要な部分もあるため、必要に応じて専門業者に依頼することが大切です。
鳥害対策費用
太陽光パネルの上に鳥が止まると、鳥のフンによってパネルが汚れ、発電効率が低下してしまうことがあります。また、鳥が巣を作ってしまうと、パネルの破損や配線の損傷につながる恐れもあります。
こうした鳥害を防ぐためには、ワイヤーを張ったり、忌避剤を使用したりするなどの対策が必要です。鳥害対策の費用は、設置場所や対策方法によって異なりますが、数万円~10万円程度が目安とされています。
ただし、鳥害対策は、設置場所の環境や鳥の種類によって効果が異なるため、試行錯誤が必要な場合もあります。 専門業者に相談しながら、最適な対策を講じることが大切です。
パネル撤去費用
太陽光発電システムは、長期間使用できるように設計されていますが、いずれは寿命を迎え、撤去が必要になります。 パネルの寿命は一般的に20年~30年といわれていますが、実際の寿命は、設置場所の環境や使用状況によって異なります。
パネルの撤去費用は、システムの規模や設置場所、撤去方法などによって異なりますが、10万円~50万円程度が目安とされています。ただし、これはあくまでも目安であり、実際の撤去費用は、業者や見積もり内容によって変動します。
パネル撤去費用を抑えるためには、設置時に撤去費用を見積もりに含めてもらうことが有効です。また、パネルのリサイクルを検討することで、撤去費用の一部を回収できる可能性もあります。
以上のように、太陽光発電システムのランニングコストには、メンテナンス費用や鳥害対策費用、パネル撤去費用などが含まれます。これらのコストは、システムの規模や設置場所、運用方法などによって異なるため、一概に言えない部分もあります。 ただし、長期的な視点に立てば、ランニングコストを上回る経済的メリットが得られる可能性が高いといえます。太陽光発電システムを導入する際には、こうしたランニングコストも考慮に入れながら、長期的なメリットを見据えて検討することが大切です。
まとめ
本記事では、太陽光発電の設置費用と投資回収について、詳しく解説してきました。
太陽光発電の設置費用は、住宅用で1kWあたり26万円~28万円程度、産業用で20万円~29万円程度が相場となっています。この費用は、太陽光パネルやパワーコンディショナー、架台などの機器費と、設置工事費で構成されます。また、補助金を活用したり、初期費用0円プランを利用したりすることで、費用を大幅に抑えられる可能性もあります。
一方、投資回収については、発電量や売電収入、自家消費による電気料金削減効果などを試算することで、おおよその目安を立てることができます。一般的な家庭で4kWのシステムを導入した場合、年間の発電量は4,000kWh~5,600kWh程度と見込まれ、売電収入と自家消費による電気料金削減効果を合わせると、年間10万円程度の経済的メリットが期待できます。ただし、実際の投資回収年数は、導入費用や立地条件、運用方法などによって異なるため、シミュレーション結果はあくまでも参考値として捉える必要があります。
また、太陽光発電システムには、メンテナンス費用や鳥害対策費用、パネル撤去費用などのランニングコストもかかります。これらのコストは、システムの規模や設置場所、運用方法などによって異なりますが、長期的なメリットを見据えて、導入を検討することが重要です。
太陽光発電は、初期費用こそかかるものの、長期的には電気料金の削減や売電収入によって、大きな経済的メリットが得られる可能性が高いエネルギー源です。加えて、CO2排出量の削減など、環境面でのメリットも大きいと言えます。
太陽光発電の導入を検討する際には、設置費用や投資回収、ランニングコストなどを総合的に勘案し、長期的なメリットを見据えて判断することが大切です。また、補助金制度や初期費用0円プランなども上手に活用しながら、自分の予算や目的に合った最適なシステムを選ぶことが重要だと言えるでしょう。
太陽光発電は、私たち一人一人にとって身近な存在となりつつあります。地球環境保護と経済的メリットを両立できる太陽光発電を、上手に活用していくことが求められる時代と言えるのではないでしょうか。
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