お役立ちコラム 2024.12.02
オール電化のメリット・デメリットと賢い活用方法完全ガイド
近年、環境への配慮や光熱費の節約を目指す家庭が増えるなか、オール電化住宅への関心が高まっています。
家庭内のエネルギーをすべて電気でまかなう暮らしは、従来のガスと電気を併用する生活とは大きく異なりますが、快適な住環境を実現する選択肢として注目を集めています。
目次
オール電化の基礎知識
オール電化住宅とは、従来ガスで対応していた給湯や調理、暖房などの熱源をすべて電気でまかなう住宅のことを指します。
省エネルギー性能が高く、環境にやさしい住まいとして評価されており、安全性の向上も大きな特徴です。
2000年代以降、技術革新によって効率的な電気利用が可能になり、多くの住宅メーカーがオール電化仕様の家づくりを提案しています。
オール電化システムの仕組み
オール電化システムの核となるのは、深夜電力を有効活用する仕組みです。
夜間の割安な電気料金を利用してお湯を沸かしたり、暖房用の熱を蓄えたりすることで、光熱費の削減を実現し、さらに電力需要の平準化にも貢献します。
システムの中心となる機器は、給湯設備のエコキュート、調理用のIHクッキングヒーター、そして暖房用の蓄熱暖房機で構成されています。
エコキュートの特徴と役割
エコキュートは、空気中の熱を利用して効率的にお湯を沸かすヒートポンプ式給湯器です。
従来の電気温水器と比べて消費電力を約3分の1に抑えることができ、深夜電力を活用することで、さらなるコスト削減が可能になります。
370リットルのタンクを備えた一般的なエコキュートは、4人家族の1日の給湯需要に十分対応できる容量を確保しています。
IHクッキングヒーターの基本
IHクッキングヒーターは、電磁誘導加熱方式を採用した最新の調理機器です。
鍋やフライパンを直接発熱させる仕組みにより、熱効率が約90%と高く、ガスコンロの約40%と比べて大きな差があり、省エネ効果も期待できます。
火を使わない調理が可能なため、キッチン周りの安全性が向上し、お手入れも簡単になるという特徴があります。
蓄熱暖房システムについて
蓄熱暖房システムは、深夜電力を利用して蓄熱レンガを温め、日中はその熱を放出して暖房をまかなう仕組みです。
熱効率の高い暖房方式として知られ、蓄熱式床暖房と組み合わせることで、より快適な室内環境を実現できます。
エコキュートで沸かしたお湯の熱を床暖房に利用できるハイブリッド方式も登場し、さらなる省エネ効果が期待できます。
オール電化の主なメリット
オール電化住宅は、快適な暮らしを実現しながら、環境にもやさしい住まい方を提案します。
省エネルギー性能が高く、光熱費の削減効果が期待でき、さらに室内環境の改善にも貢献します。
家族の安全を守りながら、経済的な暮らしを実現できる住宅設備として、多くの家庭で注目を集めています。
光熱費の一元管理と節約効果
従来のガスと電気を併用する住宅では、それぞれに基本料金が発生していましたが、オール電化住宅では電気料金の一本化が実現します。
一般的な家庭では、東京ガスと東京電力の基本料金を比較した場合、年間およそ8,580円の削減効果が見込まれ、さらに深夜電力の活用によって、より大きな節約が可能になります。
2024年現在の統計によると、4人家族の平均的なオール電化住宅の電気料金は月額16,533円程度であり、これは従来型の住宅における電気とガスの合計料金と比べて経済的といえます。
安全性と室内環境の向上
オール電化住宅では、火を使用しない調理や給湯が実現し、住まいの安全性が大きく向上します。
特に小さな子どもや高齢者のいる家庭では、火災や事故のリスクを軽減できる点が評価され、さらに室内の空気環境も改善されます。
近年の技術革新により、従来のガス機器と同等以上の性能を確保しながら、より安全で快適な住環境を実現できるようになっています。
火災リスクの軽減
オール電化住宅では、火を使わない調理機器や給湯設備を採用することで、火災の発生リスクを大幅に減らすことができます。
実際に、損害保険会社2社がオール電化住宅割引を導入しており、火災保険料が通常より安くなる場合もあり、さらにガス漏れの心配も完全になくなります。
IHクッキングヒーターには安全装置が標準装備されており、鍋の温度が一定以上になると自動的に火力を調整する機能も備わっています。
室内空気質の改善
従来のガスコンロでは、調理時に不完全燃焼による有害物質が発生する可能性がありましたが、IHクッキングヒーターではそのような心配がありません。
キッチンで調理をする際も、室内の空気が汚れにくく、換気の負担が軽減され、特に冬場の調理時における結露の発生も抑えられます。
快適な室内環境を保ちながら、家族の健康にも配慮した住まい方を実現できるのが、オール電化住宅の大きな特徴です。
災害時の強み
大規模な地震や台風などの自然災害が発生した際に、オール電化住宅は強みを発揮します。
ライフラインの早期復旧が期待でき、非常時の水の確保も可能で、さらに二次災害のリスクも低減できます。
東日本大震災や熊本地震の経験から、災害に強い住まいづくりの選択肢として、オール電化システムの価値が見直されています。
復旧の早さ
電気は都市ガスや水道と比べて復旧作業が迅速に進められるという特徴があります。
東日本大震災の事例では、発災から3日で約80%、8日後には約94%の地域で電力が復旧し、一方でガスの復旧には地域によって1ヶ月以上かかったケースもあり、早期の生活再建という点でオール電化住宅の優位性が実証されました。
2007年の新潟中越沖地震においても、電力は2日後に復旧したのに対し、プロパンガスは7日後、都市ガスは42日後の復旧となった実績があります。
非常用水の確保
オール電化住宅に設置されているエコキュートには、一般的な4人家族で370リットルの貯水タンクが備わっています。
災害時に断水が発生した場合でも、タンク内の水を生活用水として3日分程度活用でき、洗濯や掃除、トイレの水として利用可能なほか、緊急時の温水としても使用できます。
2024年に発生した能登半島地震では、長期の断水により多くの住民が不便な生活を強いられましたが、エコキュートを備えたオール電化住宅では、タンク内の水を生活用水として活用し、困難な状況を乗り切った事例が報告されています。
オール電化の注意点と対策
オール電化住宅には多くのメリットがある一方で、導入を検討する際には慎重に考えるべき課題もあります。
初期投資の費用や電気料金の変動、そしてランニングコストについて、しっかりと理解しておく必要があります。
適切な対策を講じることで、これらの課題を最小限に抑えることが可能です。
コストに関する課題
オール電化システムの導入には、従来型の住宅設備と比べて大きな初期投資が必要になります。
日々の生活における電気使用量の増加や、時間帯別の料金変動についても、あらかじめ把握しておくことが重要です。
長期的な視点で費用対効果を考えることで、より賢い選択が可能になります。
初期費用の検討
オール電化システムの導入には、エコキュートやIHクッキングヒーター、蓄熱暖房機などの設備購入費用が必要です。
一般的な4人家族向けの370リットルタイプのエコキュートでは、本体価格に加えて基礎工事費用や電気工事費用、水道関連工事費用を含めると、45万円から70万円程度の費用がかかり、さらにIHクッキングヒーターの導入には追加の工事費用も発生します。
2024年現在、給湯省エネ事業による8万円の補助金制度が利用可能で、各自治体独自の支援制度と組み合わせることで、初期費用の負担を軽減できる可能性があります。
電気料金の変動への対応
オール電化向けの電気料金プランでは、深夜の電気料金が割安に設定される一方で、日中の電気料金は従来型より高めに設定されています。
家族の生活スタイルによって電気の使用時間帯が異なるため、時間帯別料金制を十分に理解し、電気料金の変動に対応した家電の使用計画を立てることが重要です。
電力自由化によって選択肢が広がった電気料金プランの中から、家族の生活パターンに合った最適なプランを選ぶことで、月々の電気料金を抑えることができます。
設備面での制約
オール電化住宅では、電気に依存する生活スタイルゆえの制約がいくつか存在します。
停電への備えや調理器具の選択、そして設備の設置場所について、事前に十分な検討が必要です。
これらの制約は適切な対策を講じることで解決できるため、導入前にしっかりと理解しておくことが大切です。
停電時の対応策
オール電化住宅では停電時にすべての設備が使用できなくなるリスクがあります。
家庭内の電気設備を守るために蓄電池システムの導入を検討したり、非常時用のカセットコンロや携帯型発電機を備えておくことで、突然の停電にも対応できます。
寒冷地では停電時の暖房確保が特に重要となるため、電気に依存しない暖房器具として蓄熱式の石油ストーブなども備えておくと安心です。
調理器具の制限事項
IHクッキングヒーターでは、専用の調理器具が必要になるため、これまで使用していた調理道具の見直しが必要になります。
一般的な調理器具では鉄やステンレス製の底の平らな鍋やフライパンは使用できますが、アルミ製や銅製の調理器具、また中華鍋のように底が丸い形状の物は使えないため、新たにIH対応の調理器具をそろえる必要があります。
直火を使った調理ができないため、魚を網焼きにしたり、野菜を炙ったりといった調理方法には工夫が必要になります。
エコキュートの設置条件
エコキュートは大型の設備のため、設置スペースの確保が重要な課題となります。
機器の運転音や振動を考慮して、寝室や近隣住宅から離れた場所に設置する必要があり、また重量物であるため設置場所の地盤の強度にも注意が必要です。
寒冷地や海岸部など地域特有の気候条件に応じた機種選定も必要で、設置後のメンテナンス作業のためのスペースも考慮しなければなりません。
効率的な運用のポイント
オール電化住宅の特徴を最大限に活かすためには、適切な運用方法を知ることが重要です。
深夜電力の活用や季節ごとの設定調整、そして省エネ対策を組み合わせることで、より経済的な暮らしを実現できます。
家族のライフスタイルに合わせた運用方法を見つけることで、快適さと経済性を両立させることができます。
夜間電力の活用方法
夜間の電気料金が安価に設定されているオール電化プランでは、深夜時間帯を効果的に活用することが重要です。
洗濯機や食洗機などの家電製品はタイマー機能を使って夜間に運転するよう設定し、さらにエコキュートによるお湯の沸かし上げも深夜電力の時間帯に行うことで、電気代を大幅に節約できます。
一般的な深夜電力の時間帯である午後11時から翌朝7時までの間に、できるだけ多くの電力消費を集中させることで、月々の電気料金を効果的に抑えることができます。
季節に応じた設定管理
エコキュートの効率は外気温の影響を大きく受けるため、季節に応じた適切な設定管理が必要です。
夏場は省エネモードを活用してお湯の温度を控えめに設定し、冬場は沸き増し設定を活用して必要な湯量を確保するなど、季節ごとの使用状況に合わせた調整が重要です。
外出や長期不在の際には沸き上げを休止するなど、きめ細かな設定管理を行うことで、さらなる省エネ効果が期待できます。
省エネのための工夫
オール電化住宅では、断熱性能の向上が省エネに大きく貢献します。
窓からの冷気を防ぐ断熱カーテンの活用や、ドアの隙間を埋める防寒対策など、住まい全体の断熱性を高めることで、暖房効率が向上し電気代の節約にもつながります。
浴室乾燥機の使用を控えめにし、晴れた日には自然乾燥を選択するなど、日々の生活における工夫も重要です。
太陽光発電との連携
オール電化住宅に太陽光発電システムを導入することで、電気代の削減効果をさらに高めることができます。
日中の太陽光発電で作られた電力を自家消費することで、割高な日中の電気料金を抑えることができ、さらに蓄電池を組み合わせることで夜間の電力消費にも対応できます。
2024年現在、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の普及に向けた補助金制度も充実しており、太陽光発電との組み合わせによって、より環境にやさしく経済的な住まいづくりが可能になっています。
費用対効果を高める方法
オール電化住宅の導入効果を最大限に引き出すためには、適切な計画と運用が欠かせません。
電気料金プランの選択や補助金制度の活用、そして計画的なメンテナンスによって、長期的な費用対効果を高めることができます。
2024年現在、さまざまな支援制度が整備されており、これらを賢く活用することで初期投資の負担を軽減できます。
電気料金プランの選び方
電力小売自由化により、家族構成や生活パターンに合わせて、多様な電気料金プランから最適なものを選択できるようになっています。
日中の在宅時間が少ない共働き世帯では深夜電力型のプランが有利であり、在宅時間が長い家庭では太陽光発電の余剰電力買取と組み合わせたプランを検討することで、より経済的な電気の使用が可能になります。
家族の電気使用傾向を把握し、半年に一度程度はプランの見直しを行うことで、さらなる節約効果が期待できます。
補助金・支援制度の活用
2024年の給湯省エネ事業では、エコキュートの導入に対して8万円の補助金が用意されています。
各自治体でも独自の省エネ住宅支援制度を設けており、さらにZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の基準を満たす住宅では、上乗せ補助を受けられる可能性もあります。
これらの支援制度を組み合わせることで、高額な初期投資の負担を大幅に軽減できます。
メンテナンス方法
オール電化設備の定期的な点検と適切な清掃により、機器の寿命を延ばすことができます。
エコキュートは年1回程度の点検を行い、IHクッキングヒーターは使用後の日常的な清掃を心がけることで、トラブルを未然に防ぎ、修理費用の発生を抑えることができます。
機器の取扱説明書に記載された推奨期間での部品交換や、異常が見られた際の早めの対応により、長期的なコスト削減につながります。
まとめ
オール電化住宅は、環境への配慮と経済性、そして安全性を兼ね備えた、現代のライフスタイルに適した住まい方といえます。
初期費用や設備面での制約はあるものの、適切な運用とメンテナンスを行うことで、長期的には大きなメリットが得られる選択肢です。
2024年は省エネ住宅への支援制度も充実しており、これらを活用しながら、家族のライフスタイルに合わせた最適なオール電化システムを選択することで、快適で持続可能な暮らしを実現できます。
この記事を書いた人
TRENDLINE編集部
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