お役立ちコラム 2025.11.10
太陽光の売電価格2025|相場・申請・卒FIT完全ガイド
「2025年の太陽光発電の売電価格はいくらになるの?」
「10月から価格が変わると聞いたけど、どういうこと?」
太陽光発電の導入を検討している方、あるいはすでに設置していてFIT期間が終了する方にとって、売電価格の動向は最も気になる情報でしょう。
実は、2025年度の売電価格には、これまでにない大きな変更があります。
経済産業省は、屋根設置型太陽光発電の導入を加速化するため、2025年10月から「初期投資支援スキーム」を導入すると発表しました。
これにより、10kW未満の住宅用では最初の4年間が24円/kWh(従来比60%増)、10kW以上50kW未満の事業用屋根設置では最初の5年間が19円/kWhと、大幅に増額されます。
この制度変更は、太陽光発電の投資回収期間を劇的に短縮し、住宅用で約4年という驚異的なスピードでの回収を可能にします。
しかし、この高単価を確保するためには、申請期限を守ることが絶対条件です。
10kW未満は2026年1月6日まで、10kW以上は2025年12月12日までに経済産業省への設備認定申請を完了する必要があります。
また、すでに太陽光発電を設置していてFIT期間が終了する「卒FIT」の方々にとっては、売電を続けるか、自家消費にシフトするかという重要な選択が迫られています。
卒FIT後の売電価格は6円〜10円/kWhと大幅に下がる一方、電気料金は約30円/kWhですから、自家消費の方が経済的に有利なのは明白です。
本記事では、2025年度の売電価格の詳細から申請スケジュール、卒FIT後の賢い運用方法まで、太陽光発電の売電に関するすべての情報を網羅的に解説します。
制度変更のポイント、申請手続きの流れ、蓄電池やV2Hを活用した自家消費最適化の方法、そして補助金の活用まで、具体的なデータと事例をもとにお伝えします。
この記事を最後までお読みいただくことで、2025年の売電制度を正しく理解し、最も有利な選択ができるようになるでしょう。
目次
2025年の売電価格と制度の要点

10kW未満/10〜50kW未満の売電単価と買取期間
2025年度の太陽光発電の売電価格について、正確に理解することが重要です。
ここでは、発電容量別の売電単価と買取期間、そして従来との違いについて詳しく解説します。
まず、太陽光発電の区分について確認しましょう。
FIT制度では、発電容量によって**「住宅用」と「事業用」**に分類されます。
10kW未満は「住宅用太陽光」、10kW以上は「事業用太陽光」として扱われ、それぞれ売電価格と買取期間が異なります。
10kW未満(住宅用)の売電価格
2025年度の10kW未満の売電価格には、時期によって大きな違いがあります。
2025年4月〜9月に認定を取得する場合、売電単価は15円/kWhです。
これは2024年度の16円/kWhから1円低下した金額であり、従来通りの緩やかな下落傾向が続いています。
しかし、注目すべきは2025年10月以降です。
10月から導入される「初期投資支援スキーム」により、売電価格が段階的な設定に変更されます。
具体的には、最初の4年間が24円/kWh、5年目以降が8.3円/kWhという二段階の価格設定です。
この変更の狙いは、初期投資の回収を早めることで、太陽光発電の導入をより魅力的にすることにあります。
従来の15円/kWhで10年間という単純な設定に比べて、投資回収期間が約4年に短縮されるという大きなメリットがあります。
買取期間は従来通り10年間で変更ありません。
したがって、10月以降に認定を取得した場合、最初の4年間は高単価で売電でき、5年目以降は低単価になりますが、トータルでの売電収入は増加する計算になります。
以下の表に、2025年度の10kW未満の売電価格をまとめました。
|
認定時期 |
1〜4年目 |
5〜10年目 |
買取期間 |
特徴 |
|
4月〜9月 |
15円/kWh |
15円/kWh |
10年間 |
従来型の固定価格 |
|
10月以降 |
24円/kWh |
8.3円/kWh |
10年間 |
初期投資支援型 |
この表から明らかなように、10月以降の認定取得が圧倒的に有利です。
ただし、10月以降の高単価を確保するためには、10月までに申請を完了する必要があるため、逆算したスケジュール管理が重要です。
10kW以上50kW未満(事業用)の売電価格
事業用太陽光発電についても、2025年度は大きな変更があります。
まず、この区分は屋根設置型に限定されることに注意が必要です。
地上設置型は別の区分となり、より厳しい条件が課されます。
2025年4月〜9月の売電単価は10円/kWhで、2024年度から据え置きです。
しかし、10月以降は10kW未満と同様に段階的価格設定が導入されます。
具体的には、最初の5年間が19円/kWh、6年目以降が8.3円/kWhという設定です。
10kW未満が4年間の高単価であるのに対し、事業用は5年間と1年長く設定されているのは、事業用の方が初期投資額が大きいためです。
買取期間は20年間で、これは従来と変わりません。
したがって、最初の5年間で初期投資を回収し、残りの15年間は低単価ながらも安定した収入を得られる仕組みです。
重要なのは、自家消費30%以上の要件が継続されることです。
この区分で認定を受けるには、発電した電力の30%以上を自家消費する必要があります。
自家消費率が30%を下回ると、売電の権利を剥奪される可能性があるため、事業計画の段階で十分な検討が必要です。
以下の表に、2025年度の10kW以上50kW未満の売電価格をまとめました。
|
認定時期 |
1〜5年目 |
6〜20年目 |
買取期間 |
自家消費要件 |
|
4月〜9月 |
10円/kWh |
10円/kWh |
20年間 |
30%以上必須 |
|
10月以降 |
19円/kWh |
8.3円/kWh |
20年間 |
30%以上必須 |
この表から、10月以降の認定取得が大幅に有利であることがわかります。
ただし、アパートなど集合住宅に設置する場合は、20kW未満まで自家消費要件が免除されるという特例があります。
50kW以上250kW未満の売電価格
より大規模な設備については、2025年度の売電単価は8.9円/kWhです。
これは2024年度の9.2円/kWhから0.3円低下した金額です。
この規模になると、初期投資支援スキームの対象外となり、従来通りの固定価格での買取となります。
買取期間は20年間です。
売電価格下落の背景
なぜ売電価格が年々下がっているのか、その背景を理解することも重要です。
売電価格は、太陽光発電システムの導入コストを基準に設定されています。
太陽光パネルや関連機器の価格が技術進歩により低下していること、大量生産によるコスト削減が進んでいることから、売電価格も下げられているのです。
また、再エネ賦課金の負担増に対する批判的な声も影響しています。
再エネ賦課金とは、FIT制度の買取費用を電力消費者が負担する仕組みで、電気料金に上乗せされています。
この負担が年々増加していることから、できるだけ売電価格を抑えることで、国民負担を軽減するという政策的な意図もあります。
しかし、2025年10月からの初期投資支援スキームは、この流れに逆行するように見えます。
実はこのスキームは、国民負担が増えない範囲内で実施されるよう設計されています。
最初の数年間の高単価と、その後の低単価を組み合わせることで、20年間のトータル買取額は従来とほぼ同じになるよう調整されているのです。
つまり、支払うタイミングを前倒しすることで、導入者の投資回収を早め、普及を促進するという巧妙な設計です。
10月以降の段階的単価・自家消費30%要件の確認
2025年10月以降に導入される「初期投資支援スキーム」について、さらに詳しく解説します。
この制度変更は、太陽光発電の導入判断に大きな影響を与えるため、正確に理解することが重要です。
段階的単価の仕組み
初期投資支援スキームの核心は、売電単価を期間で分けることです。
従来は、10年間または20年間、同じ価格で買い取られていました。
しかし、新しい仕組みでは、最初の数年間を高単価に設定し、その後を低単価にすることで、初期投資の回収を加速させます。
具体的な単価設定を再度確認しましょう。
10kW未満(住宅用)
- 1年目〜4年目:24円/kWh
- 5年目〜10年目:8.3円/kWh
10kW以上50kW未満(事業用屋根設置)
- 1年目〜5年目:19円/kWh
- 6年目〜20年目:8.3円/kWh
この設定により、投資回収期間がどれほど短縮されるのか、具体例で見てみましょう。
住宅用5kWシステムの投資回収シミュレーション
- 初期費用:約125万円
- 年間発電量:約6,000kWh
- 自家消費率:30%
- 売電量:約4,200kWh
10月以降の認定の場合
- 1〜4年目の売電収入:4,200kWh × 24円 × 4年 = 約403,200円
- 5〜10年目の売電収入:4,200kWh × 8.3円 × 6年 = 約209,160円
- 合計売電収入:約612,360円
- 自家消費による電気代削減(10年間):1,800kWh × 30円 × 10年 = 約540,000円
- 10年間の経済メリット合計:約1,152,360円
初期費用125万円に対して、最初の4年間だけで約80万円(売電収入+自家消費削減)を回収できる計算です。
残り約45万円を5年目以降の6年間で回収するため、実質的な回収期間は約5〜6年となります。
これは、従来の15円/kWh固定の場合の回収期間(約10〜12年)と比べて、大幅な短縮です。
4月〜9月の認定の場合
- 10年間の売電収入:4,200kWh × 15円 × 10年 = 約630,000円
- 自家消費による電気代削減(10年間):約540,000円
- 10年間の経済メリット合計:約1,170,000円
経済メリットの合計額は10月以降とほぼ同じですが、回収のタイミングが大きく異なります。
10月以降の方が早期に資金を回収できるため、資金繰りの面で有利です。
なぜ段階的単価を導入するのか
この制度設計の背景には、いくつかの政策的意図があります。
第一に、太陽光発電の導入拡大です。
政府は2030年までに新築住宅の60%に太陽光発電を設置するという目標を掲げています。
初期投資の回収期間を短縮することで、導入のハードルを下げ、目標達成を加速させる狙いがあります。
第二に、再エネ賦課金の抑制です。
段階的単価により、トータルの買取額は従来と同水準に抑えられるため、国民負担を増やさずに普及を促進できます。
第三に、自家消費への移行促進です。
5年目以降の売電価格を低く設定することで、導入者は自然と自家消費にシフトすることが期待されます。
これは、電力系統への負担軽減にもつながります。
自家消費30%要件の詳細
10kW以上50kW未満の事業用太陽光発電では、発電量の30%以上を自家消費することがFIT認定の条件となっています。
この要件を満たさない場合、認定が取り消され、売電できなくなる可能性があります。
自家消費率の計算方法は以下の通りです。
自家消費率 = 自家消費電力量 ÷ 発電電力量 × 100
例えば、年間発電量が10,000kWhで、そのうち3,500kWhを自家消費した場合、自家消費率は35%となり、要件を満たします。
自家消費率を高めるための方法は、以下の通りです。
自家消費率を高める方法
- 昼間の電力使用を増やす:空調、照明、機械設備などを発電時間帯に集中運転
- 蓄電池を導入する:昼間の余剰電力を蓄え、夜間に使用
- 電気自動車の充電を昼間に行う:業務用車両の充電タイミングを調整
- 給湯器を電気式にする:昼間にお湯を沸かして蓄熱
特に、事業所や工場では、電力使用パターンの見直しにより、自家消費率を大幅に高めることが可能です。
ただし、アパートなどの集合住宅に設置する場合は、20kW未満まで自家消費要件が免除されます。
これは、集合住宅では共用部の電力使用が限られており、30%の自家消費が困難なためです。
営農型太陽光の特例
営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)については、特別な扱いがあります。
3年を超える農地転用許可が認められる案件は、自家消費を行わなくても、災害時の活用が可能であればFIT制度の対象となります。
これは、農業と発電を両立させる営農型の普及を後押しするための措置です。
以下の表に、自家消費要件をまとめました。
|
設備容量 |
自家消費要件 |
例外規定 |
|
10kW未満 |
なし |
– |
|
10kW以上50kW未満 |
30%以上必須 |
集合住宅は20kW未満まで免除 |
|
営農型(3年超許可) |
免除 |
災害時活用が条件 |
自家消費要件は、認定後も継続的に確認されます。
年間の報告義務があり、自家消費率が基準を下回った場合、改善指導や最悪の場合は認定取り消しもあり得ます。
したがって、事業計画の段階で、実現可能な自家消費計画を立てることが極めて重要です。
申請スケジュールと手続きの流れ
電力会社・経産省の提出期限と逆算スケジュール
2025年度の売電価格を確保するためには、申請期限を守ることが絶対条件です。
ここでは、申請スケジュールと逆算した準備計画について詳しく解説します。
経済産業省への設備認定申請期限
2025年度のFIT認定を取得するための、経済産業省への設備認定申請期限は以下の通りです。
10kW未満(住宅用):2026年1月6日
10kW以上(事業用):2025年12月12日
この期限までに、設備認定の申請を完了し、受理される必要があります。
期限を1日でも過ぎると、2026年度の価格が適用されてしまうため、注意が必要です。
2026年度の価格はまだ未定ですが、従来の傾向から見れば、さらに低下する可能性が高いと予想されます。
特に、2025年10月以降の高単価(24円/kWh、19円/kWh)を確保したい場合、この期限は極めて重要です。
電力会社への接続契約申請期限
設備認定申請の前に、電力会社への接続契約申請を完了する必要があります。
接続契約とは、太陽光発電設備を電力系統に接続するための契約です。
接続契約申請の期限は、電力会社によって異なります。
また、地域や申請の混雑状況によっても、審査にかかる時間が変動します。
一般的には、接続契約の審査に1〜3ヶ月程度かかると言われています。
したがって、経済産業省への申請期限から逆算すると、以下のスケジュールが目安となります。
逆算スケジュール
10kW未満(住宅用)の場合
- 2026年1月6日:経産省への設備認定申請期限
- 2025年10月〜11月:電力会社への接続契約申請完了(逆算2〜3ヶ月)
- 2025年9月〜10月:販売店との契約締結・現地調査(逆算1ヶ月)
- 2025年8月〜9月:販売店への相談開始
10月以降の高単価(24円/kWh)を確保したい場合、実質的には2025年8月頃から動き始める必要があります。
10kW以上(事業用)の場合
- 2025年12月12日:経産省への設備認定申請期限
- 2025年9月〜10月:電力会社への接続契約申請完了(逆算2〜3ヶ月)
- 2025年8月〜9月:販売店との契約締結・現地調査(逆算1ヶ月)
- 2025年7月〜8月:販売店への相談開始
10kW以上の場合、申請書類がより複雑になるため、さらに早めの準備が推奨されます。
以下の表に、逆算スケジュールをまとめました。
|
時期 |
10kW未満 |
10kW以上 |
必要なアクション |
|
8月頃 |
相談開始推奨 |
相談開始推奨 |
販売店選び・見積もり依頼 |
|
9月頃 |
契約締結 |
契約締結 |
現地調査・設計確定 |
|
10月頃 |
接続契約申請 |
接続契約申請 |
電力会社への書類提出 |
|
12月頃 |
接続契約完了 |
設備認定申請期限 |
経産省への申請 |
|
1月頃 |
設備認定申請期限 |
工事着工 |
認定取得後に施工 |
このスケジュールは、あくまで目安です。
実際には、販売店の対応速度、電力会社の審査状況、年末年始の休業などにより、予想以上に時間がかかることがあります。
したがって、余裕を持ったスケジュールで進めることが重要です。
2025年10月の高単価を狙う場合の注意点
10月以降の高単価(24円/kWh、19円/kWh)を確保するためには、10月以降に認定を取得する必要があります。
しかし、10月直後は申請が殺到する可能性が高いです。
実際、過去の制度変更時には、期限直前に申請が集中し、販売店も電力会社も処理が追いつかなくなる事態が発生しました。
したがって、10月の高単価を狙う場合でも、9月中には電力会社への申請を完了しておき、10月に入ってすぐに経産省への申請ができる状態にしておくことが理想です。
逆に、4月〜9月の15円/kWhでも構わないという場合は、比較的余裕を持ったスケジュールで進められます。
申請が遅れた場合のリスク
申請期限に間に合わなかった場合、どうなるのでしょうか。
最も大きなリスクは、2026年度の価格が適用されてしまうことです。
2026年度の価格はまだ発表されていませんが、過去の傾向から見て、さらに低下する可能性が高いと予想されます。
特に、初期投資支援スキームが2026年度も継続されるかどうかは不明です。
もし継続されなければ、従来の固定価格に戻る可能性もあります。
また、申請が集中して審査が遅れた場合、工事着工が遅れることにもつながります。
工事が遅れれば、それだけ売電開始も遅れ、経済メリットの実現が先送りになります。
したがって、2025年度の高単価を確実に確保したいのであれば、早めの行動が鉄則です。
接続契約→設備認定までの手順と注意点
FIT認定を取得するための具体的な手続きの流れと、各段階での注意点について解説します。
ステップ1:販売店選びと契約締結
最初のステップは、信頼できる販売店を選び、契約を締結することです。
販売店選びは、FIT認定取得の成否を左右する重要な要素です。
以下のポイントをチェックしましょう。
販売店選びのチェックポイント
- FIT申請の実績が豊富か
- 申請手続きのサポートを提供しているか
- 現地調査を丁寧に行うか
- 見積もりが詳細で透明性があるか
- アフターサービスが充実しているか
販売店を選んだら、現地調査を依頼します。
現地調査では、屋根の形状、方角、周辺の影の影響、電力系統への接続可能性などを確認します。
調査結果を基に、最適なシステム設計と見積もりが提示されます。
内容に納得できたら、売買契約を締結します。
契約書には、システムの仕様、価格、工事スケジュール、保証内容などが記載されています。
特に、FIT申請のサポート内容が契約に含まれているか、確認することが重要です。
ステップ2:電力会社への接続契約申請
契約締結後、販売店が電力会社への接続契約申請を行います。
接続契約申請には、以下の書類が必要です。
接続契約申請に必要な書類
- 接続契約申込書
- 設備の仕様書(パネル、パワーコンディショナーなど)
- 設置図面(配置図、単線結線図など)
- 建物の図面(屋根設置の場合)
- 土地の権利証明(地上設置の場合)
電力会社は、申請を受けて系統連系の可否を審査します。
審査では、電力系統に接続しても問題ないか、電圧や周波数に影響がないか、などが確認されます。
審査期間は、通常1〜3ヶ月程度ですが、地域や時期によって変動します。
審査の結果、接続が承認されると、接続契約の締結となります。
接続契約書には、接続の条件、費用負担、工事スケジュールなどが記載されています。
特に、**接続費用(系統連系費用)**が発生する場合があるため、事前に確認が必要です。
接続費用は、電柱からの距離や変圧器の増設の必要性などによって、数万円〜数十万円と幅があります。
ステップ3:経済産業省への設備認定申請
接続契約が完了したら、いよいよ経済産業省への設備認定申請です。
設備認定は、FIT制度の対象として認められるための手続きです。
設備認定申請は、専用のシステム「再生可能エネルギー電子申請」を通じてオンラインで行います。
申請には、以下の書類が必要です。
設備認定申請に必要な書類
- 設備認定申請書
- 事業計画書(10kW以上の場合)
- 接続契約証明書(電力会社との契約書のコピー)
- 設備の仕様書
- 配置図・単線結線図
- 土地・建物の権利証明書
- 施工業者の資格証明(電気工事士など)
10kW以上の場合、事業計画の提出が必要です。
事業計画には、発電量の見込み、自家消費率、メンテナンス計画、災害時の対応などを記載します。
申請書類の準備は、経験豊富な販売店であればサポートしてくれます。
ただし、最終的な申請者は設置者本人であるため、内容を十分に確認してから提出することが重要です。
経済産業省の審査期間は、通常1〜2ヶ月程度です。
審査では、設備の仕様が基準を満たしているか、事業計画が適切か、などが確認されます。
審査を通過すると、設備認定書が交付されます。
これで、FIT制度の対象として正式に認められたことになります。
ステップ4:工事着工と系統連系
設備認定を取得したら、ようやく工事に着手できます。
認定取得前に工事を開始すると、FIT認定が無効になる可能性があるため、必ず認定取得後に着工してください。
工事期間は、住宅用で1〜3日程度、事業用で規模によりますが数週間〜数ヶ月です。
工事完了後、電力会社による系統連系の検査が行われます。
検査に合格すると、電力系統への接続が完了し、売電開始となります。
売電開始日から、FIT制度による固定価格での買取が始まります。
注意点とトラブル回避のポイント
FIT申請では、以下の点に注意することでトラブルを回避できます。
注意点1:書類の不備
申請書類に不備があると、審査が遅れたり、差し戻しになったりします。
特に、図面の不備や、権利証明書の不足などが多いです。
販売店と協力して、事前に書類を入念にチェックしましょう。
注意点2:期限の見落とし
申請期限を見落とすと、希望する年度の価格が適用されません。
カレンダーにマークし、アラートを設定するなど、期限管理を徹底しましょう。
注意点3:事業計画の実現可能性
10kW以上の場合、事業計画の内容が実現可能か、慎重に検討してください。
特に、**自家消費率30%**を達成できるかどうかは、事前にシミュレーションが必要です。
注意点4:変更があった場合の届出
認定取得後に、設備の仕様や設置場所を変更する場合、変更届が必要です。
変更届を出さずに変更すると、認定取り消しのリスクがあります。
以上の手順と注意点を守ることで、スムーズにFIT認定を取得し、2025年度の売電価格を確保できます。
卒FIT・今後の動向と賢い運用

卒FIT後の売電単価相場と新電力プランの選び方
FIT期間が終了する「卒FIT」を迎えた方、あるいは近い将来迎える方にとって、その後の選択は重要な問題です。
ここでは、卒FIT後の売電価格の相場と、新電力会社のプランの選び方について解説します。
卒FITとは
卒FITとは、FIT制度による固定価格での買取期間が終了することを指します。
10kW未満の住宅用太陽光発電の場合、買取期間は10年間です。
したがって、2009年11月にFIT制度(当時の余剰電力買取制度)が始まってから10年後の2019年11月以降、順次卒FITを迎える家庭が出てきました。
2025年現在、すでに数百万世帯が卒FITを経験しており、今後も毎年数十万世帯が卒FITを迎えると予想されています。
FIT期間中は、48円/kWh(2009年度)など高単価で売電できていましたが、期間終了後はどうなるのでしょうか。
卒FIT後の売電価格の相場
卒FIT後も、太陽光発電で発電した余剰電力を売電することは可能です。
ただし、固定価格での買取は終了するため、市場価格に近い水準での取引となります。
卒FIT後の売電価格の相場は、6円〜10円/kWh程度です。
これは、FIT期間中の価格(15円〜48円/kWh)と比べて、大幅に低下しています。
具体的な買取価格は、電力会社や新電力会社によって異なります。
以下に、主要な電力会社の卒FIT買取価格の例を示します。
主要電力会社の卒FIT買取価格例(2025年時点の目安)
- 大手電力会社:7円〜9円/kWh程度
- 新電力会社:8円〜10円/kWh程度
- シェアリングエネルギー:8円/kWh
- スマートテック:10円/kWh
新電力会社の中には、10円/kWh以上の買取価格を設定しているところもあります。
ただし、買取価格は市場状況や会社の方針により変動するため、最新情報を確認することが重要です。
また、買取価格だけでなく、契約条件も確認する必要があります。
一部の会社では、太陽光の売電と電力の購入をセットにすることで、買取価格を優遇するプランを提供しています。
新電力会社の選び方
卒FIT後の売電先を選ぶ際のポイントは、以下の通りです。
選び方のポイント
ポイント1:買取価格
最も重要なのは、やはり買取価格です。
複数の電力会社を比較し、最も高い買取価格を提示している会社を選ぶのが基本です。
ただし、買取価格だけでなく、他の条件も総合的に判断することが重要です。
ポイント2:契約期間と解約条件
買取契約には、通常契約期間が設定されています。
1年契約、2年契約など、会社によって異なります。
また、契約期間中に解約する場合、違約金が発生することもあります。
契約期間と解約条件を事前に確認し、柔軟に対応できる会社を選びましょう。
ポイント3:電力購入とのセット割
一部の新電力会社では、太陽光の売電契約と電力の購入契約をセットにすることで、買取価格を優遇しています。
また、電気料金も割引されることがあります。
セット契約のメリットとデメリットを比較し、トータルでお得かどうか判断しましょう。
ポイント4:会社の信頼性
新電力会社の中には、経営が不安定な会社もあります。
契約後に会社が倒産したり、事業撤退したりすると、売電先を再度探す手間がかかります。
会社の規模、実績、財務状況などを確認し、信頼できる会社を選びましょう。
ポイント5:手続きの簡便さ
契約手続きが複雑だと、時間と手間がかかります。
オンラインで簡単に契約できる会社や、サポート体制が充実している会社を選ぶと良いでしょう。
以下の表に、新電力会社選びのチェックリストをまとめました。
|
チェック項目 |
確認内容 |
重要度 |
|
買取価格 |
1kWhあたりの単価 |
非常に高い |
|
契約期間 |
最低契約期間と自動更新 |
高い |
|
解約条件 |
違約金の有無と金額 |
高い |
|
セット割 |
電力購入とのセット条件 |
中 |
|
会社の信頼性 |
実績・規模・財務状況 |
高い |
|
手続き |
契約の簡便さ・サポート |
中 |
複数の会社を比較検討し、総合的に最も有利な会社を選びましょう。
売電を続けるべきか、自家消費にシフトすべきか
卒FIT後の選択肢として、売電を続ける以外に、自家消費にシフトするという選択肢もあります。
実は、経済的には自家消費の方が圧倒的に有利です。
その理由を、数字で見てみましょう。
- 卒FIT後の売電価格:6円〜10円/kWh
- 電力会社から買う電気料金:約30円/kWh
- 差額:20円〜24円/kWh
つまり、発電した電気を売るよりも、自分で使う方が20円以上お得なのです。
したがって、卒FIT後は、できるだけ発電した電気を自家消費し、余った分だけを売電するという運用が最も経済的です。
しかし、昼間に発電した電気を夜間に使うためには、蓄電池が必要です。
次の節では、蓄電池やV2Hを活用した自家消費最適化の方法について詳しく解説します。
自家消費シフト—蓄電池・V2H・補助金活用で家計最適化
卒FIT後、あるいはこれから太陽光発電を導入する方にとって、自家消費を最大化することが家計最適化の鍵となります。
ここでは、蓄電池やV2Hを活用した自家消費シフトの方法と、補助金の活用について解説します。
なぜ自家消費が重要なのか
前述の通り、電気を売るよりも自分で使う方が、1kWhあたり20円以上お得です。
また、電気料金は年々上昇傾向にあります。
2025年現在、1kWhあたり約30円ですが、今後さらに上昇する可能性が高いです。
一方、売電価格は低下傾向が続いています。
この「電気料金の上昇」と「売電価格の低下」という2つのトレンドにより、自家消費のメリットはますます大きくなっています。
蓄電池の導入
自家消費を最大化する最も効果的な方法が、蓄電池の導入です。
蓄電池とは、電気を蓄えて後で使える装置です。
太陽光発電は昼間しか発電しませんが、蓄電池があれば、昼間の余剰電力を蓄えて、夜間や雨天時に使用できます。
蓄電池の導入により、自家消費率を大幅に高めることができます。
蓄電池なしの場合
- 自家消費率:約30%
- 余剰売電:約70%
蓄電池ありの場合
- 自家消費率:約70〜80%
- 余剰売電:約20〜30%
蓄電池を導入することで、自家消費率が2倍以上に向上します。
これにより、電力会社から買う電気を大幅に削減でき、電気代の削減効果が飛躍的に高まります。
蓄電池の費用と回収期間
蓄電池の費用は、容量によって異なりますが、100万〜200万円程度が一般的です。
例えば、容量10kWhの蓄電池で約150万円程度です。
初期費用が高額なため、投資回収を懸念する方もいるでしょう。
しかし、電気代削減効果を計算すると、意外と早期に回収できます。
蓄電池導入の経済効果シミュレーション
- 太陽光発電:5kW
- 年間発電量:6,000kWh
- 蓄電池なしの自家消費:1,800kWh(30%)
- 蓄電池ありの自家消費:4,800kWh(80%)
- 増加した自家消費:3,000kWh
- 電気代削減効果:3,000kWh × 30円 = 年間9万円
年間9万円の削減効果があれば、150万円の蓄電池は約17年で回収できます。
ただし、これは現在の電気料金での計算です。
電気料金が今後も上昇すれば、回収期間はさらに短縮されます。
また、蓄電池には停電時のバックアップ機能もあります。
災害時に電気が使えることの安心感は、金銭的価値だけでは測れません。
V2H(Vehicle to Home)の活用
電気自動車(EV)を所有している方には、V2Hという選択肢もあります。
V2Hとは、電気自動車を家庭用蓄電池として活用する技術です。
EVには大容量のバッテリーが搭載されています(40〜60kWh程度)。
V2H機器を導入することで、昼間の太陽光発電でEVを充電し、夜間にEVから家庭に給電することができます。
V2Hの費用は、40万〜100万円程度です。
蓄電池よりも安価で、しかもEVのバッテリー容量(40〜60kWh)は家庭用蓄電池(5〜15kWh)よりも大きいため、コストパフォーマンスが高いと言えます。
ただし、V2HはEVが自宅にある時しか使えないため、日中にEVで出かけることが多い場合は、効果が限定されます。
補助金の活用
蓄電池やV2Hの導入費用を抑えるために、補助金を活用しましょう。
国や自治体では、蓄電池やV2Hの導入に対する補助金制度を提供しています。
国の補助金
経済産業省や環境省が実施している補助金制度があります。
例えば、「分散型エネルギーリソース(DER)補助金」などがあり、蓄電池やV2Hの導入費用の一部が補助されます。
補助額は、設備や条件によって異なりますが、数十万円規模の補助が受けられることもあります。
自治体の補助金
都道府県や市区町村が独自に補助金を提供しています。
例えば、東京都では「東京ゼロエミポイント」制度があり、太陽光発電と蓄電池の同時設置で最大45万円の補助が受けられます。
自治体の補助金は、地域によって内容が大きく異なります。
お住まいの自治体のホームページや、環境・エネルギー関連の部署に問い合わせて、最新情報を確認しましょう。
補助金の申請には、以下の点に注意が必要です。
補助金申請の注意点
- 申請期限:予算がなくなり次第終了することが多い
- 申請タイミング:工事前に申請が必要な場合が多い
- 対象機器:補助金の対象となる機器が指定されている
- 書類の準備:見積書、仕様書、設置図面などが必要
販売店に、補助金申請のサポートを依頼すると、手続きがスムーズです。
以下の表に、自家消費最適化の選択肢をまとめました。
|
方法 |
初期費用 |
自家消費率 |
回収期間目安 |
メリット |
デメリット |
|
蓄電池 |
100万〜200万円 |
70〜80% |
15〜20年 |
停電時も使える |
初期費用高 |
|
V2H |
40万〜100万円 |
60〜70% |
10〜15年 |
EV活用で低コスト |
EVが必要 |
|
行動変容 |
0円 |
40〜50% |
即 |
費用不要 |
効果限定的 |
行動変容による自家消費向上
蓄電池やV2Hを導入しなくても、生活パターンを工夫することで、ある程度自家消費率を高めることができます。
具体的には、以下のような工夫が有効です。
自家消費を高める生活の工夫
- 洗濯機を昼間に回す:晴れた日の昼間に洗濯
- 食洗機を昼間に使う:タイマー機能を活用
- エコキュートを昼間に沸かす:昼間モードに設定変更
- エアコンを昼間に運転:在宅時は発電時間帯に空調
- 電気自動車を昼間に充電:休日は自宅で昼間充電
これらの工夫により、初期費用ゼロで自家消費率を10〜20%程度向上させることが可能です。
蓄電池の導入と併用すれば、さらに効果が高まります。
まとめ

2025年度の太陽光発電の売電価格について、詳しく解説してきました。
最後に、重要なポイントをまとめます。
2025年度の売電価格
2025年度には、大きな制度変更があります。
10月以降、「初期投資支援スキーム」が導入され、段階的な売電単価が適用されます。
**10kW未満(住宅用)**は、最初の4年間が24円/kWh、5年目以降が8.3円/kWhです。
**10kW以上50kW未満(事業用屋根設置)**は、最初の5年間が19円/kWh、6年目以降が8.3円/kWhです。
この変更により、投資回収期間が住宅用で約4年と劇的に短縮され、太陽光発電の導入メリットが大幅に向上します。
ただし、4月〜9月の認定では従来通りの固定価格(15円/kWh、10円/kWh)が適用されるため、10月以降の認定取得が圧倒的に有利です。
また、10kW以上50kW未満では、自家消費30%以上の要件が継続されるため、事業計画の段階で十分な検討が必要です。
申請スケジュール
2025年度の売電価格を確保するためには、申請期限を守ることが絶対条件です。
経済産業省への設備認定申請期限は、10kW未満が2026年1月6日、10kW以上が2025年12月12日です。
しかし、申請期限ギリギリでは間に合わないリスクがあります。
電力会社への接続契約申請や、販売店との契約など、事前の準備に時間がかかるためです。
逆算すると、2025年8月〜9月には動き始める必要があります。
特に、10月以降の高単価を確保したい場合は、9月中には電力会社への申請を完了しておくことが理想です。
申請手続きは、販売店のサポートを受けながら進めることで、スムーズに進められます。
卒FIT後の選択
FIT期間が終了した「卒FIT」を迎えた方は、売電を続けるか、自家消費にシフトするかを選択する必要があります。
卒FIT後の売電価格は6円〜10円/kWh程度と大幅に低下します。
一方、電気料金は約30円/kWhですから、自家消費の方が20円以上お得です。
したがって、蓄電池やV2Hを導入して自家消費率を高めることが、家計最適化の鍵となります。
蓄電池の費用は100万〜200万円程度ですが、年間9万円程度の電気代削減効果があれば、15〜20年で回収できます。
また、国や自治体の補助金を活用することで、初期費用を数十万円削減できる可能性があります。
蓄電池を導入しない場合でも、生活パターンを工夫することで、ある程度自家消費率を高めることができます。
今後の動向
太陽光発電の売電価格は、今後も低下傾向が続くと予想されます。
一方、電気料金は上昇傾向にあります。
この2つのトレンドにより、売電よりも自家消費のメリットが大きくなるという流れは、今後さらに強まるでしょう。
したがって、これから太陽光発電を導入する方は、最初から自家消費を前提とした設計をすることが賢明です。
蓄電池やV2Hとのセット導入を検討し、長期的な経済メリットを最大化しましょう。
最後に
太陽光発電は、環境にも家計にも優しい、優れた選択です。
2025年度の制度変更により、導入のメリットはさらに高まっています。
しかし、メリットを最大化するためには、正確な情報に基づいた適切な判断が必要です。
本記事の情報を参考に、自分にとって最適な選択をしてください。
申請期限を守り、補助金を活用し、長期的な視点で計画を立てることで、太陽光発電は大きな経済メリットをもたらすはずです。
あなたの太陽光発電ライフが、豊かで持続可能なものとなることを願っています。
Contact
お問い合わせ
各自治体で補助金が使えるケースがございますので、
詳しくはお問い合わせください。
