お役立ちコラム 2025.11.10
営農型太陽光の始め方と稼ぎ方・許可手順・補助金事例・最新
「農業だけでは収入が不安定で、将来が心配…」
「耕作放棄地を何とか活用できないだろうか?」
「太陽光発電に興味はあるけど、農地だから無理だと諦めていた」
こうした悩みを抱える農業従事者の方々に、今注目されているのが**営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)**です。
営農型太陽光発電とは、農地に支柱を立てて上部空間に太陽光パネルを設置し、下部で農業、上部で発電を同時に行う画期的な仕組みです。
農業収入に加えて、売電収入という安定した第二の収入源を確保できるため、農業経営を大きく改善できる可能性があります。
実際、50kW規模の営農型太陽光発電を導入すると、月間約10万円、年間約120万円の売電収入が見込めます。
20年間の累計では、約1,400万円もの収益になる計算です。
しかも、農林水産省の発表によると、2022年度末時点で累計5,351件の許可実績があり、年々増加傾向にあります。
国も2050年カーボンニュートラル実現の重要戦略として位置づけ、補助金や税制優遇措置を拡充しています。
しかし、メリットばかりではありません。
初期費用は50kW規模で1,000万〜2,000万円と高額です。
また、農地の一時転用許可を取得し、年次報告義務を果たし続ける必要があります。
収量が地域平均の8割を下回ると、最悪の場合は設備撤去を求められるリスクもあります。
本記事では、営農型太陽光発電の仕組みから、農地転用許可の手順、メリットとリスク、初期費用と収益性、補助金の活用方法、そして成功事例まで、2025年最新の情報をもとに徹底解説します。
「光飽和点」という科学的根拠、許可申請に必要な書類、作物選定のポイント、架台設計の要点など、実践的な情報を網羅しています。
この記事を最後までお読みいただくことで、営農型太陽光発電が自分に適しているかを判断でき、具体的な導入ステップが見えてくるでしょう。
農業と発電の両立で、持続可能な経営を実現する第一歩を、ぜひ踏み出してください。
目次
営農型太陽光の基礎と制度

仕組みと光飽和点—作物に必要な日射確保の考え方
営農型太陽光発電を理解するために、まずその基本的な仕組みと、科学的な根拠である「光飽和点」について詳しく解説します。
営農型太陽光発電の基本構造
営農型太陽光発電は、農地に高さ3〜4メートルの支柱を立て、その上部に太陽光パネルを設置する仕組みです。
パネルの下部では、通常通り農作物を栽培します。
つまり、同じ土地で農業と発電を同時に行うことで、土地を二重活用するのです。
この仕組みは、別名「ソーラーシェアリング」とも呼ばれます。
「シェアリング(sharing)」という言葉が示す通り、太陽光を**農業と発電で共有する(シェアする)**というコンセプトです。
従来、農地は農業にのみ使用されるのが原則でした。
しかし、営農型太陽光発電の登場により、農地の上部空間という未活用だった資源を有効活用できるようになったのです。
光飽和点という科学的根拠
「太陽光パネルで影ができたら、作物が育たないのでは?」
多くの方が最初に抱く疑問でしょう。
しかし、営農型太陽光発電には、この疑問を解消する科学的な根拠があります。
それが「光飽和点」という概念です。
光飽和点とは、植物の光合成が最大になる日射量の限界値のことです。
千葉県のCHO技術研究所の長島彬氏が、この光飽和点に着目して営農型太陽光発電の技術を考案しました。
長島氏の研究により、以下のことが明らかになりました。
光飽和点の重要な発見
- 作物が成長するために必要な光合成の量には限界がある
- 光飽和点を超える日射量は、光合成に利用されない
- 過剰な日射は、むしろ葉焼けや葉の脱落など悪影響を及ぼすこともある
- 光飽和点は植物の種類ごとに異なる
つまり、植物に必要以上の太陽光を与えても、光合成は増えず、場合によっては害になるのです。
この「余剰の太陽光」を発電に活用するのが、営農型太陽光発電の基本原理です。
長島氏は2003年に特許を出願し、2005年には無償で誰でも使える技術として公開しました。
この研究成果が、2013年に農林水産省が営農型太陽光発電を正式に認める背景となったのです。
作物に必要な日射量の確保
では、具体的にどれくらいの日射量を作物に確保すれば良いのでしょうか。
農林水産省のガイドラインでは、太陽光パネルによる遮光率を33%程度に抑えることが推奨されています。
言い換えれば、太陽光の67%以上を作物に届けるということです。
この遮光率33%という数字は、多くの作物にとって光飽和点を下回らない範囲として設定されています。
実際、遮光率33%以下であれば、ほとんどの作物の栽培に支障がないことが実証されています。
ただし、作物によって適した遮光率は異なります。
以下の表に、作物の日照特性と適合性をまとめました。
|
作物分類 |
日照特性 |
遮光率の適合性 |
代表的な作物 |
|
陽生植物 |
強い日照を好む |
低遮光率が必要 |
トマト、トウモロコシ、稲(一部) |
|
半陰生植物 |
適度な日陰を好む |
適合しやすい |
茶、ブルーベリー、アスパラガス |
|
陰性植物 |
日陰を好む |
非常に適合 |
ミョウガ、シイタケ、フキ |
陰性植物や半陰生植物は、営農型太陽光発電と相性が良いと言えます。
逆に、強い日照を必要とする陽生植物でも、パネルの配置を工夫すれば栽培可能です。
例えば、パネルとパネルの間隔を広げたり、パネルを東西方向に配置して南北方向の日照を確保したりする方法があります。
実際の栽培作物の割合
農林水産省の調査(令和4年度末)によると、営農型太陽光発電で実際に栽培されている作物の割合は以下の通りです。
- 野菜類(茶を含む):約30%
- 稲:約20%
- 果樹類:約15%
- その他(芋類、豆類、花卉など):約35%
この実績から、多様な作物で営農型太陽光発電が実践されていることが分かります。
日射量の調整方法
営農型太陽光発電では、パネルの設置方法を工夫することで、作物に届く日射量を調整できます。
主な調整方法は以下の通りです。
日射量を調整する設計のポイント
- パネルの間隔:パネル同士の隙間を広げれば、直射日光が増える
- パネルの角度:角度を調整して影の範囲をコントロール
- パネルの配置方向:東西配置か南北配置かで日照パターンが変わる
- 架台の高さ:高くすれば影が分散し、日照が均一になる
- パネルの透過率:一部に透過型パネルを使用して光を通す
これらを組み合わせることで、栽培する作物に最適な日照環境を作り出せます。
設計段階で、農業の専門家と太陽光発電の専門家が協力することが重要です。
農地の一時転用許可と運用要件(収量報告・更新期間)
営農型太陽光発電を始めるには、農地の一時転用許可を取得する必要があります。
ここでは、許可制度の内容と、許可取得後の運用要件について詳しく解説します。
農地の一時転用許可とは
農地は、農地法により農業以外の目的での使用が厳しく制限されています。
営農型太陽光発電は、農地に支柱を立てて太陽光パネルを設置するため、法律上は「農地転用」に該当します。
ただし、下部で農業を継続するため、**「一時転用」**という扱いになります。
一時転用とは、農地を一時的に農業以外の目的で使用するための許可です。
営農型太陽光発電の場合、農業を継続することが前提なので、完全な転用ではなく、上部空間のみを発電に使用するという位置づけです。
許可制度の歴史と改正
営農型太陽光発電のための一時転用許可制度は、2013年3月に農林水産省が通達を出したことで始まりました。
当初、許可期間は3年以内とされていました。
しかし、3年という短い期間では、初期投資を回収するのが困難で、融資も受けにくいという問題がありました。
そこで、2018年5月に制度が改正され、一定の条件を満たせば許可期間を10年以内に延長できるようになりました。
この改正により、営農型太陽光発電の導入が大幅に促進されました。
実際、2019年度以降、許可件数が急増しています。
10年許可の条件
許可期間を10年に延長できるのは、以下のいずれかの条件に当てはまる場合です。
10年許可の適用条件
- 担い手が所有または利用権を設定している農地で、当該担い手が営農を行う場合
- 荒廃農地を活用する場合
- 第2種農地または第3種農地を活用する場合(農用地区域外)
これらの条件に該当しない場合は、3年ごとの更新が必要になります。
許可申請の手続き
一時転用許可の申請は、市町村の農業委員会に対して行います。
申請には、通常の農地転用許可に必要な書類に加えて、営農型太陽光発電特有の書類を添付する必要があります。
申請に必要な主な書類
- 一時転用許可申請書(農業委員会指定の様式)
- 営農計画書(栽培予定作物、栽培方法、予想収量など)
- 発電設備の設計図(パネル配置、架台構造、支柱位置など)
- 営農への影響評価(日照量シミュレーション、収量への影響予測など)
- 関連データや専門家の意見書
- 先行事例の参考資料
- 土地の登記簿謄本
- 周辺農地の同意書(必要な場合)
特に重要なのが、営農への影響評価です。
太陽光パネルの設置により、作物の収量や品質にどのような影響があるかを、科学的データに基づいて説明する必要があります。
申請から許可までの期間は、通常2〜3ヶ月程度です。
ただし、書類に不備があったり、追加説明を求められたりすると、さらに時間がかかります。
運用要件:年次報告義務
一時転用許可を取得した後も、継続的な報告義務があります。
最も重要なのが、年1回の農業委員会への報告です。
報告内容は以下の通りです。
年次報告の内容
- 栽培した作物の種類
- 作付面積
- 収穫量(単収)
- 作物の品質
- 営農状況の写真
- 発電量のデータ
農業委員会は、この報告をもとに、適切な営農が継続されているかを確認します。
特に重視されるのが、収量の維持です。
農林水産省のガイドラインでは、以下の基準が設けられています。
収量の基準
- 下部農地の単収が、同じ年の地域平均の8割以上を維持すること
- 作物の品質に著しい劣化が生じないこと
この基準を満たせない場合、改善指導が行われます。
それでも改善されない場合、最悪のケースでは一時転用許可が取り消され、設備の撤去を求められる可能性があります。
したがって、営農型太陽光発電では、発電だけでなく、農業もしっかり継続することが絶対条件です。
更新期間と継続審査
一時転用許可には、更新期間が設定されています。
- 10年許可の場合:10年ごとに継続審査
- 3年許可の場合:3年ごとに継続審査
継続審査では、過去の営農実績や収量データをもとに、許可を更新するかどうかが判断されます。
継続審査に合格すれば、再度同じ期間の許可が下ります。
ただし、収量基準を満たしていない、営農が適切に行われていないと判断されれば、許可が更新されないこともあります。
以下の表に、許可制度の要点をまとめました。
|
項目 |
内容 |
|
申請先 |
市町村の農業委員会 |
|
許可期間 |
原則3年、条件により10年 |
|
更新 |
3年ごとor10年ごとに継続審査 |
|
年次報告 |
年1回必須 |
|
収量基準 |
地域平均の8割以上 |
|
基準未達の場合 |
改善指導→許可取消の可能性 |
運用上の注意点
営農型太陽光発電を長期的に継続するために、以下の点に注意しましょう。
- 営農記録をしっかりつける:収量、作業内容、気象条件などを記録
- 地域の農業者と情報交換:地域平均の収量を把握
- 定期的な農地の管理:雑草対策、土壌改良など
- 専門家のアドバイスを受ける:農業改良普及員などに相談
- 報告期限を守る:提出遅れは印象が悪い
営農型太陽光発電は、単なる発電事業ではなく、農業を主体とした事業であることを忘れてはいけません。
導入メリットとリスク管理

環境貢献・収益化・耕作放棄地活用の具体的効果
営農型太陽光発電の導入によって得られる具体的なメリットについて、詳しく解説します。
メリット1:収益の二重化による経営安定
営農型太陽光発電の最大のメリットは、農業収入と売電収入の二重の収益源を確保できることです。
農業は、天候や市場価格の変動により収入が不安定になりがちです。
しかし、売電収入は固定価格買取制度(FIT)により、長期間安定した収入が見込めます。
具体的な収益シミュレーションを見てみましょう。
50kW規模の収益モデル
- 初期投資:約1,000万〜1,500万円
- 売電単価:21円/kWh(2023年度FIT価格)
- 設備利用率:13%(全国平均)
- 月間発電時間:24時間 × 365日 ÷ 12ヶ月 × 0.13 = 約95時間
- 月間売電収入:50kW × 95時間 × 21円 = 約99,750円
- 年間売電収入:約120万円
- 20年間の累計売電収入:約2,400万円
初期投資を差し引いても、20年間で約1,000万円以上の利益が見込めます。
これに農業収入が加わるため、経営基盤は大幅に強化されます。
また、売電収入があることで、新規就農のハードルが下がる効果もあります。
農業だけでは収入が不安定で就農を躊躇していた若者も、安定収入があることで農業に挑戦しやすくなります。
実際、営農型太陽光発電を導入した農家では、後継者が見つかったという事例も報告されています。
メリット2:環境貢献とSDGsへの貢献
営農型太陽光発電は、再生可能エネルギーを生み出すため、CO2削減に大きく貢献します。
50kW規模の営農型太陽光発電は、年間約30トンのCO2削減効果があると言われています。
これは、杉の木約2,100本が1年間に吸収するCO2量に相当します。
また、SDGs(持続可能な開発目標)の複数の目標達成にも貢献します。
営農型太陽光発電が貢献するSDGs
- 目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」:再エネ普及
- 目標11「住み続けられるまちづくりを」:地域活性化
- 目標12「つくる責任 つかう責任」:持続可能な生産
- 目標13「気候変動に具体的な対策を」:温暖化防止
企業や自治体がESG(環境・社会・ガバナンス)投資を重視する中、営農型太陽光発電は高い評価を受けています。
農業者にとっても、環境に配慮した農業を実践していることは、ブランド価値の向上につながります。
メリット3:耕作放棄地の再生と農地保全
日本では、高齢化や後継者不足により、耕作放棄地が年々増加しています。
2020年時点で、全国の耕作放棄地は約42万ヘクタールに達しています。
営農型太陽光発電は、この耕作放棄地を再生する有効な手段として注目されています。
耕作放棄地に営農型太陽光発電を導入することで、以下のメリットがあります。
耕作放棄地活用のメリット
- 農地として再生:荒廃した土地が再び農業生産に活用される
- 地域の景観改善:荒れ地が整備された農地に変わる
- 地域経済の活性化:雇用創出、関連産業の振興
- 農地の保全:継続的な管理により土壌が維持される
実際、千葉県匝瑳市では、耕作放棄地を活用した大規模な営農型太陽光発電が成功しています。
この事例では、荒廃していた土地が再び農業生産に活用され、地域に雇用も生まれました。
メリット4:営農環境の改善
太陽光パネルは、下部に適度な日陰を作り出します。
この日陰効果により、以下のようなメリットがあります。
- 夏場の暑さ軽減:作業環境が改善され、熱中症リスクが減少
- 作物のストレス軽減:過度な日射から作物を守る
- 土壌の乾燥防止:蒸発が抑えられ、灌水量を削減できる
- 霜害の軽減:朝晩の放射冷却を抑える効果
特に、近年の猛暑により農作業の負担が増している中、日陰効果は作業効率の向上に大きく貢献します。
メリット5:エネルギーの自家消費
発電した電力は、売電するだけでなく、自家消費にも活用できます。
農業では、以下のような用途で電力を使用します。
- 灌水設備(ポンプ)
- 温室の空調・暖房
- 農産物の冷蔵・冷凍
- 乾燥機
- 照明
これらに太陽光発電の電力を使用すれば、電気代を大幅に削減できます。
近年、売電価格が低下傾向にある一方、電気料金は上昇しています。
そのため、売電よりも自家消費の方が経済的メリットが大きくなりつつあります。
以下の表に、営農型太陽光発電のメリットをまとめました。
|
メリット |
具体的効果 |
経済的・社会的価値 |
|
収益二重化 |
年間120万円の売電収入 |
経営安定・後継者確保 |
|
環境貢献 |
年間30トンのCO2削減 |
SDGs達成・ブランド価値向上 |
|
耕作放棄地活用 |
農地再生・地域活性化 |
景観改善・雇用創出 |
|
営農環境改善 |
日陰効果・作業効率向上 |
労働負担軽減 |
|
自家消費 |
電気代削減 |
コスト削減 |
これらのメリットを総合すると、営農型太陽光発電は経済的・社会的・環境的に大きな価値を生み出すと言えます。
初期費用・融資ハードル・長期継続義務の課題
営農型太陽光発電には多くのメリットがありますが、同時に留意すべきリスクと課題も存在します。
ここでは、導入前に必ず理解しておくべき課題について詳しく解説します。
課題1:高額な初期費用
営農型太陽光発電の最大の課題は、初期投資が高額であることです。
50kW規模の場合、初期費用は1,000万〜2,000万円程度が目安です。
この金額は、通常の野立て太陽光発電(約800万〜1,200万円)と比べても高額です。
なぜ営農型太陽光発電の方が高いのでしょうか。
初期費用が高額になる理由
- 架台の高さ:農作業ができる高さ(最低2m以上)が必要で、架台が大型化
- 基礎工事:高い架台を支えるため、基礎が大規模になる
- 施工の難易度:通常の太陽光発電より施工が複雑
- 農地での作業:農地を傷めないよう慎重な施工が必要
特に、最低地上高2m以上という要件が、コストを押し上げる大きな要因です。
また、風の影響を受けやすいため、強度の高い架台が必要になります。
初期費用の内訳は、おおよそ以下の通りです。
初期費用の内訳(50kW規模)
- 太陽光パネル:約250万〜350万円
- パワーコンディショナー:約100万〜150万円
- 架台・支柱:約300万〜500万円
- 基礎工事:約200万〜400万円
- 電気工事:約100万〜150万円
- 系統連系費用:約50万〜100万円
- 設計・申請費用:約50万〜100万円
最も大きな割合を占めるのが、架台・支柱と基礎工事です。
課題2:融資を受けるハードル
高額な初期費用を自己資金で賄える農業者は少数です。
多くの場合、銀行などから融資を受ける必要があります。
しかし、営農型太陽光発電の融資には、以下のような課題があります。
融資を受ける際の課題
- 事業の新規性:前例が少なく、金融機関が評価しにくい
- 農業収入の不安定性:返済能力への懸念
- 担保の問題:農地は担保設定が難しい
- 長期返済計画:10〜15年の返済期間が必要
特に、地方銀行や信用金庫など、営農型太陽光発電の融資実績が少ない金融機関では、審査が厳しくなる傾向があります。
融資を受けやすくするためには、以下の対策が有効です。
融資獲得のポイント
- 詳細な事業計画書:収支シミュレーション、リスク分析を含む
- 営農実績のアピール:これまでの農業経営の実績を示す
- 補助金の活用:自己資金比率を高める
- 専門家のサポート:コンサルタントや行政書士の協力を得る
- 実績のある金融機関:営農型太陽光発電の融資実績がある銀行を選ぶ
また、日本政策金融公庫など、政府系金融機関は比較的融資に前向きです。
農業者向けの融資制度もあるため、積極的に活用しましょう。
課題3:長期継続義務と収量維持の負担
前述の通り、営農型太陽光発電では年次報告義務があり、収量を地域平均の8割以上維持する必要があります。
この継続義務は、農業者にとって大きな負担になる可能性があります。
継続義務による負担
- 収量管理のプレッシャー:天候不良でも基準を満たす必要がある
- 報告書作成の手間:毎年、詳細なデータをまとめる必要がある
- 営農の自由度低下:収量を優先せざるを得ない
- 長期的な拘束:10年〜20年という長期間の義務
特に、高齢の農業者にとっては、長期間の営農継続が体力的に厳しい場合もあります。
また、収量が基準を下回った場合、設備撤去のリスクがあります。
撤去には多額の費用がかかり、投資が無駄になる可能性もあります。
課題4:作物選定の制約
営農型太陽光発電では、すべての作物が適しているわけではありません。
日照を強く必要とする作物は、収量が減少する可能性があります。
また、パネルの影響で作業効率が低下する作物もあります。
営農型太陽光発電に不向きな作物の例
- 強い日照を必要とする果樹(一部)
- 大型機械が必要な作物(支柱が作業の妨げになる)
- 背の高い作物(パネルと干渉する)
したがって、現在栽培している作物から、適合する作物への転換が必要になるケースもあります。
作物を変更すると、栽培技術の習得、販売先の確保など、新たな課題が生じます。
課題5:メンテナンスと管理コスト
太陽光発電設備には、定期的なメンテナンスが必要です。
主なメンテナンス項目は以下の通りです。
- パネルの清掃(年1〜2回)
- 電気系統の点検(年1回)
- 架台・支柱の劣化チェック(年1回)
- 除草作業
- パワーコンディショナーの交換(10〜15年後)
これらのメンテナンスには、年間10万〜30万円程度の費用がかかります。
また、パネル下部での農作業は、支柱があることで通常より手間がかかる場合があります。
大型機械が使えず、手作業が増えるケースもあります。
以下の表に、営農型太陽光発電の課題とリスクをまとめました。
|
課題 |
内容 |
対策 |
|
高額初期費用 |
1,000万〜2,000万円 |
補助金活用・融資獲得 |
|
融資ハードル |
審査が厳しい |
詳細な事業計画・実績アピール |
|
長期継続義務 |
10〜20年の営農義務 |
無理のない計画・後継者確保 |
|
収量維持 |
地域平均の8割以上 |
適切な作物選定・栽培管理 |
|
作物制約 |
適合作物が限られる |
事前の適合性評価 |
|
メンテナンス |
年間10万〜30万円 |
保守契約・予算確保 |
これらの課題を正しく理解し、適切に対策することで、リスクを最小限に抑えることができます。
導入プロセス・補助金・事例

導入手順と設計要点(作物選定/架台設計/施工・保守)
営農型太陽光発電を実際に導入する際の具体的な手順と、設計上の重要ポイントについて解説します。
ステップ1:計画立案と作物選定
営農型太陽光発電の導入を検討する際、最初に行うべきは綿密な計画立案です。
計画立案では、以下の項目を決定します。
計画立案で決定すべき事項
- 導入規模(発電容量)
- 設置場所(どの農地に設置するか)
- 栽培する作物
- 資金調達方法
- 事業開始時期
特に重要なのが、作物の選定です。
前述の通り、営農型太陽光発電に適した作物と、そうでない作物があります。
作物選定の際は、以下の点を考慮しましょう。
作物選定のチェックポイント
- 光飽和点:その作物に必要な日射量はどれくらいか
- 栽培実績:自分に栽培経験があるか、地域に実績があるか
- 市場性:販売先が確保できるか、価格は安定しているか
- 作業性:支柱がある環境で作業ができるか
- 収益性:収量と価格のバランスが良いか
先行事例を参考にすることも有効です。
農林水産省のホームページには、全国の営農型太陽光発電の事例が公開されています。
自分の地域や、栽培を検討している作物の事例を調べてみましょう。
ステップ2:専門業者への相談と現地調査
計画が固まったら、営農型太陽光発電の専門業者に相談します。
業者選びは、事業の成否を左右する重要なポイントです。
以下の点をチェックして、信頼できる業者を選びましょう。
業者選びのチェックポイント
- 営農型太陽光発電の施工実績が豊富か
- 農業への理解があるか
- 農地転用許可の申請サポートができるか
- アフターメンテナンスが充実しているか
- 見積もりが詳細で透明性があるか
業者を選んだら、現地調査を依頼します。
現地調査では、以下の項目を確認します。
- 農地の形状・面積・傾斜
- 日照条件
- 土壌の状態
- 電力系統への接続可能性
- 周辺環境(隣接地、道路幅など)
調査結果をもとに、業者が設計案と見積もりを作成します。
ステップ3:設計の要点—架台設計
営農型太陽光発電の設計で最も重要なのが、架台の設計です。
架台設計では、以下の要件を満たす必要があります。
架台設計の法的要件
- 最低地上高2m以上:農作業ができる高さを確保
- 支柱の間隔:農業機械が通行できる幅を確保
- 強度:風圧や積雪に耐えられる構造
- 耐用年数:20年以上の耐久性
特に、最低地上高2mという要件は絶対です。
これより低いと、農地転用許可が下りません。
支柱の配置も重要です。
トラクターなどの農業機械が通行できるよう、支柱の間隔を十分に確保する必要があります。
一般的には、支柱間隔を4〜6m程度に設定します。
また、パネルの配置方法には、以下のような選択肢があります。
パネル配置の方法
- 南向き配置:発電効率を最大化(ただし影が偏る)
- 東西配置:南北方向の日照を確保(農業優先)
- 分散配置:パネルを点在させて日照を均等化
- 可動式:季節や作物に応じてパネル角度を調整
どの配置が最適かは、栽培する作物と発電効率のバランスで決まります。
農業の専門家と発電の専門家が協力して、最適な設計を見つけることが重要です。
ステップ4:農地転用許可の申請
設計が固まったら、農地転用許可の申請を行います。
申請手続きは前述の通りですが、以下の点に注意しましょう。
- 申請書類は不備がないよう入念にチェック
- 営農計画は実現可能な内容にする
- 収量予測は控えめに(達成できない目標は避ける)
- 専門家の意見書を添付すると説得力が増す
申請から許可まで、2〜3ヶ月程度かかります。
許可が下りるまでは、工事に着手できません。
ステップ5:FIT認定申請と系統連系
農地転用許可が下りたら、次はFIT認定の申請です。
FIT認定は、経済産業省の再生可能エネルギー電子申請システムから行います。
同時に、電力会社との系統連系協議も進めます。
系統連系とは、太陽光発電設備を電力系統に接続するための手続きです。
これらの手続きにも、1〜2ヶ月程度かかります。
ステップ6:施工工事
すべての許可・認定が揃ったら、いよいよ施工工事です。
施工工事の流れは以下の通りです。
- 測量・杭打ち
- 基礎工事(支柱の基礎設置)
- 支柱・架台の組み立て
- 太陽光パネルの設置
- 電気工事(配線、パワーコンディショナー設置)
- 系統連系工事
- 動作確認
工事期間は、規模によりますが1〜3ヶ月程度です。
工事中は、農地を傷めないよう細心の注意が必要です。
ステップ7:運用開始と保守
工事が完了し、系統連系が完了すれば、発電・売電開始です。
同時に、下部での農業も開始します。
運用開始後は、以下の保守・管理が必要です。
保守・管理の内容
- 定期点検:年1〜2回、専門業者による点検
- パネル清掃:汚れによる発電効率低下を防ぐ
- 除草作業:パネル下部および周辺の除草
- 営農記録:収量、作業内容などを記録
- 発電量モニタリング:異常がないかチェック
- 年次報告:農業委員会への報告書作成・提出
保守契約を業者と結んでおくと、定期点検などを任せられるため安心です。
以下の表に、導入プロセスとスケジュールをまとめました。
|
ステップ |
内容 |
期間 |
|
1.計画立案 |
作物選定・資金計画 |
1〜2ヶ月 |
|
2.業者選定 |
相談・現地調査・見積もり |
1ヶ月 |
|
3.設計 |
架台設計・パネル配置 |
1ヶ月 |
|
4.農地転用許可 |
申請・審査 |
2〜3ヶ月 |
|
5.FIT認定 |
申請・系統連系協議 |
1〜2ヶ月 |
|
6.施工 |
基礎工事・架台・パネル設置 |
1〜3ヶ月 |
|
7.運用開始 |
発電・営農開始 |
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全体として、計画開始から運用開始まで、8ヶ月〜1年程度が目安です。
補助金活用の勘所と国内外の導入事例から学ぶポイント
営農型太陽光発電の導入費用を軽減するための補助金と、成功事例から学ぶべきポイントについて解説します。
活用できる補助金制度
営農型太陽光発電には、国や地方自治体の補助金制度を活用できます。
ただし、補助金は年度ごとに内容が変わるため、最新情報を確認することが重要です。
国の主な補助金制度
- 地域再生型補助金(農林水産省)
農地を有効活用する取り組みを支援する補助金です。
営農型太陽光発電も対象となります。
補助率や金額は年度によって異なりますが、設備費の一部を補助します。
- 再生可能エネルギー導入支援(環境省)
脱炭素化を目指す地域の再エネ導入を支援する補助金です。
自治体や企業が主体となる営農型太陽光発電プロジェクトが対象です。
- 一括償却制度(税制優遇)
営農型太陽光発電設備を一括償却できる税制優遇措置があります。
通常は設備を減価償却する必要がありますが、一括償却により初年度に大きな節税効果が得られます。
地方自治体の補助金
都道府県や市町村が独自に補助金を設けている場合があります。
例えば、以下のような自治体で補助金制度があります。
- 千葉県:営農型太陽光発電導入支援
- 神奈川県:再エネ導入促進事業
- 長野県:営農型太陽光発電推進事業
お住まいの自治体のホームページや、農業委員会に問い合わせて、最新の補助金情報を確認しましょう。
補助金申請の注意点
補助金を活用する際は、以下の点に注意が必要です。
補助金申請の注意点
- 申請期限:予算がなくなり次第終了することが多い
- 申請タイミング:工事前に申請が必要な場合が多い
- 対象要件:細かい要件があり、満たさないと対象外
- 書類準備:詳細な事業計画書などが必要
- 実績報告:補助金受領後、実績報告が必要
補助金申請は複雑なため、専門家のサポートを受けることをおすすめします。
行政書士やコンサルタントに依頼すれば、申請書類の作成や手続きを代行してくれます。
国内の成功事例
営農型太陽光発電の成功事例から、導入のポイントを学びましょう。
事例1:千葉県匝瑳市—耕作放棄地の再生
千葉県匝瑳市では、耕作放棄地を活用した大規模な営農型太陽光発電が成功しています。
千葉エコ・エネルギー株式会社が主体となり、複数の農地で営農型太陽光発電を展開しています。
栽培作物は、日陰に強いミョウガを選定し、高い収量を維持しています。
この事例のポイントは以下の通りです。
- 耕作放棄地という未利用地を活用
- 日陰に適した作物を選定
- 地域雇用を創出
- 行政と連携した事業展開
事例2:ブルーベリー栽培との組み合わせ
各地で、ブルーベリー栽培と営農型太陽光発電を組み合わせた事例が成功しています。
ブルーベリーは半陰生植物であり、適度な日陰を好むため、営農型太陽光発電と相性が良いのです。
むしろ、パネルの日陰効果により、夏場の強い日差しから守られ、品質が向上したという報告もあります。
また、ブルーベリーは高付加価値作物であり、収益性も高いです。
事例3:茶園での導入
静岡県や鹿児島県など、茶の産地でも営農型太陽光発電の導入が進んでいます。
茶も半陰生植物であり、適度な遮光が品質向上につながることが知られています。
実際、営農型太陽光発電を導入した茶園では、茶葉の品質が向上したという事例もあります。
事例4:架台の二次利用—ビニールハウス化
一部の先進事例では、営農型太陽光発電の架台を二次利用しています。
架台にビニールを張ることで、ビニールハウスとしても機能させるのです。
これにより、以下のメリットがあります。
- 雨除け効果で作物の病害を防ぐ
- 温度管理が可能になる
- 高付加価値作物の栽培が可能
このような付加価値を生み出す工夫により、収益性をさらに高めることができます。
海外の事例
営農型太陽光発電は、日本発祥の技術ですが、海外でも普及が始まっています。
ドイツ
ドイツでは、大規模な営農型太陽光発電プロジェクトが進んでいます。
果樹園や野菜畑での導入が多く、農業と再エネの両立が評価されています。
フランス
フランスでは、ブドウ畑での営農型太陽光発電が注目されています。
ブドウは適度な日陰を好むため、相性が良いのです。
また、パネルが霜害や雹害から守る効果もあると報告されています。
中国
中国では、政府主導で営農型太陽光発電の大規模導入が進んでいます。
砂漠化した土地の緑化と発電を両立させる取り組みなど、環境再生の観点からも活用されています。
成功事例から学ぶポイント
これらの事例から、営農型太陽光発電を成功させるポイントが見えてきます。
成功のポイント
- 適切な作物選定:光飽和点が低い作物、高付加価値作物を選ぶ
- 地域の特性を活かす:耕作放棄地や遊休農地の活用
- 付加価値の創出:架台の二次利用など工夫を凝らす
- 行政との連携:補助金活用、地域振興との連動
- 専門家のサポート:農業・発電の両面で専門知識を活用
- 長期的視点:短期的な収益だけでなく、持続可能性を重視
営農型太陽光発電は、単なる発電事業ではありません。
農業の持続可能性を高め、地域を活性化させる取り組みです。
成功事例を参考にしながら、自分の地域や農地に最適な形を見つけていきましょう。
まとめ

営農型太陽光発電について、仕組みから導入手順、メリット・リスク、補助金、事例まで詳しく解説してきました。
最後に、重要なポイントをまとめます。
営農型太陽光発電の本質
営農型太陽光発電は、農地の上部空間に太陽光パネルを設置し、農業と発電を同時に行う仕組みです。
「光飽和点」という科学的根拠に基づき、作物に必要な日射を確保しながら、余剰の太陽光を発電に活用します。
千葉県のCHO技術研究所の長島彬氏が考案し、2013年に農林水産省が正式に認めました。
農地転用許可制度
営農型太陽光発電を始めるには、市町村の農業委員会から農地の一時転用許可を取得する必要があります。
許可期間は原則3年、条件により10年に延長できます。
許可取得後は、年1回の収量報告義務があり、地域平均の8割以上の単収を維持する必要があります。
基準を満たせない場合、最悪のケースでは設備撤去を求められるリスクもあります。
導入のメリット
営農型太陽光発電の主なメリットは以下の通りです。
- 収益の二重化:農業収入+売電収入(年間約120万円)
- 環境貢献:CO2削減、SDGs達成への貢献
- 耕作放棄地活用:荒廃農地の再生、地域活性化
- 営農環境改善:日陰効果による作業効率向上
- 後継者確保:安定収入による農業の魅力向上
50kW規模で20年間運用すれば、約1,400万円の売電収入が見込めます。
留意すべきリスク
一方、以下のリスクと課題も存在します。
- 高額初期費用:1,000万〜2,000万円の投資が必要
- 融資ハードル:事業の新規性から融資審査が厳しい
- 長期継続義務:10〜20年の営農継続が必須
- 収量維持の負担:年次報告と基準達成のプレッシャー
- 作物選定の制約:すべての作物に適合するわけではない
これらのリスクを正しく理解し、対策を講じることが重要です。
導入プロセス
導入は、計画立案→業者選定→設計→許可申請→施工→運用開始という流れで進みます。
全体として、8ヶ月〜1年程度が目安です。
特に重要なのが、作物選定と架台設計です。
光飽和点が低い作物や高付加価値作物を選び、最低地上高2m以上の架台を設計します。
補助金の活用
国や地方自治体の補助金を活用することで、初期費用を軽減できます。
農林水産省の地域再生型補助金、環境省の再エネ導入支援、税制優遇措置などがあります。
補助金申請は複雑なため、専門家のサポートを受けることをおすすめします。
成功事例から学ぶ
千葉県匝瑳市の耕作放棄地活用、ブルーベリー栽培との組み合わせ、茶園での導入など、全国で成功事例が生まれています。
成功のポイントは、適切な作物選定、地域特性の活用、付加価値の創出、行政との連携です。
最後に
営農型太陽光発電は、農業経営を安定させ、環境に貢献し、地域を活性化させる、大きな可能性を秘めた取り組みです。
しかし、高額な初期投資、長期継続義務、収量維持の責任など、決して簡単な事業ではありません。
本記事で解説した内容を参考に、自分の農地や経営状況に適しているかを慎重に判断してください。
そして、導入を決めたなら、専門家のサポートを受けながら、綿密な計画を立てて進めましょう。
営農型太陽光発電は、農業の未来を切り開く新しい選択肢です。
農業と発電の両立により、持続可能な経営を実現し、次世代に豊かな農地を引き継いでいくことができるでしょう。
あなたの営農型太陽光発電への挑戦が、成功することを心から願っています。
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