お役立ちコラム 2025.06.25
太陽光パネルの破損原因と対策について詳しく解説

太陽光発電システムを導入したあと、もっとも気になるのが太陽光パネルの破損リスクではないでしょうか。 屋外に設置される太陽光パネルは、24時間365日、さまざまな環境にさらされています。 10年、20年という長期間にわたって安定的に発電をつづけるためには、破損のリスクをただしく理解し、適切な対策をとることが重要です。
本記事では、太陽光パネルが破損する原因から、破損によってうける影響、そして具体的な対応策まで、くわしく解説していきます。 太陽光発電をすでに導入されている方も、これから導入を検討されている方も、ぜひ参考にしてください。
目次
太陽光パネルの主な破損原因
太陽光パネルの破損原因は、大きくわけて3つのカテゴリーに分類できます。 外的要因による破損、内的要因による破損、そして輸送時や施工時のトラブルによる破損です。 それぞれの破損原因をくわしくみていきましょう。
外的要因による破損
外的要因による破損は、太陽光パネルの破損原因のなかでももっとも多いケースです。 屋外に設置される太陽光パネルは、つねに自然環境にさらされており、さまざまな外的要因によって破損するリスクがあります。 とくに日本は台風や地震などの自然災害が多い国であり、これらの災害による破損には十分な注意が必要です。
飛来物や自然災害による破損
太陽光パネルの表面は強化ガラスでおおわれていますが、このガラスには特有の性質があります。 面全体でうける圧力にはつよい耐性をもっていますが、点での瞬間的な衝撃にはよわいという特徴があるのです。 そのため、石や木の枝、ゴルフボールなどの飛来物が直撃すると、クモの巣状にひびがはいってしまうことがあります。
自然災害による破損リスクも無視できません。 台風時の強風は、さまざまなものを飛ばしてきます。 また、積雪による局所的な圧力や、地震による揺れやねじれも、太陽光パネルの破損原因となります。
飛来物や自然災害による破損を防ぐための対策:
- 太陽光パネル周辺の環境整備(飛びやすいものを片付ける)
- 台風前の事前点検と補強
- 積雪地域では雪おろしの実施
- 地震対策として架台の強度確認
自然災害の種類 | 破損リスク | 主な対策 |
---|---|---|
台風 | 飛来物による直撃、強風によるたわみ | 事前の固定確認、周辺整理 |
地震 | 揺れによるひび割れ、地盤のずれ | 架台の耐震強化 |
積雪 | 局所的な圧力による破損 | 定期的な雪おろし |
雹(ひょう) | 直撃による表面ガラスの破損 | 事前の天気予報確認 |
カラスによる投石の被害が多い
意外におもわれるかもしれませんが、カラスによる投石被害は太陽光パネル破損の大きな原因のひとつです。 カラスは非常にかしこい鳥で、石をくわえて上空から落とし、太陽光パネルを破損させることがあります。 しかも、おもしろがって何度もくりかえすため、被害が拡大しやすいという特徴があります。
カラスは好奇心がつよく、光るものに興味をしめす習性があります。 太陽光パネルの表面は光を反射するため、カラスの標的になりやすいのです。 また、カラスは群れで行動することが多く、1羽が石を落とすと、ほかのカラスもまねをすることがあります。
カラス対策として効果的な方法:
- パネル周辺に石やゴルフボールなどを放置しない
- カラスよけのテグスや防鳥ネットの設置
- 定期的な見回りでカラスの行動をチェック
- 被害があった場合は早期に対処する
パネルの長期間の汚れによる破損
太陽光パネルの汚れは、単に発電効率を下げるだけでなく、破損の原因にもなります。 鳥のフンや落ち葉、花粉、黄砂などが長期間付着していると、その部分に太陽光があたらなくなります。 すると、発電できないセルの電気抵抗が局所的に大きくなり、ホットスポットとよばれる高温部分が発生するのです。
ホットスポットは100℃をこえる高温になることもあり、最悪の場合は火災の原因となります。 また、汚れが付着した部分と清潔な部分の温度差により、ガラスに熱応力がかかり、ひび割れが発生することもあります。 定期的な清掃は、発電効率の維持だけでなく、パネルの破損防止にも重要な役割をはたします。
汚れによる破損を防ぐためのポイント:
- 月1回程度の目視点検で汚れをチェック
- 鳥のフンは早めに除去する
- 落ち葉がたまりやすい季節は清掃頻度をふやす
- 専門業者による定期清掃の実施
内的要因による破損
内的要因による破損は、太陽光パネル自体の品質や経年劣化によっておこる破損です。 外的要因とちがい、目にみえない部分で進行することが多く、発見がおくれがちになります。 しかし、適切な点検とメンテナンスにより、早期発見と対処が可能です。
製造過程における傷からのヒビ割れ
太陽光パネルの製造過程で、マイクロクラックとよばれる微細な傷がついてしまうことがあります。 このマイクロクラックは、出荷検査でも発見できないほど小さな傷ですが、時間の経過とともに大きくなっていきます。 寒暖差のくりかえしや、風雨による振動などにより、徐々に傷が拡大し、最終的には大きなひび割れにつながるのです。
マイクロクラックが原因となる破損の特徴は、使用開始から数年後に突然あらわれることです。 初期不良とはちがい、保証期間をすぎてから問題が顕在化することもあります。 そのため、定期的な点検により、早期発見することが重要になります。
マイクロクラックの発見と対処方法:
- 赤外線カメラによる温度分布の確認
- 発電量の推移を定期的にモニタリング
- 異常を発見したら専門業者に相談
- メーカー保証の適用可否を確認
検査方法 | 発見可能な異常 | 実施頻度の目安 |
---|---|---|
目視検査 | 大きなひび割れ、変色 | 月1回 |
赤外線検査 | ホットスポット、マイクロクラック | 年1〜2回 |
電気検査 | 発電量低下、断線 | 年1回 |
詳細検査 | 内部の劣化、接続不良 | 5年に1回 |
表面よりも裏面のほうが弱い
太陽光パネルの構造上、表面は強化ガラスで保護されていますが、裏面の強度は表面にくらべて低くなっています。 とくに野立て設置の太陽光発電所では、裏面からの衝撃に注意が必要です。 雑草が成長して裏面にあたったり、竹や笹が突き破ったりするケースが報告されています。
裏面の破損は、表面からは確認できないため、発見がおくれることがあります。 また、裏面から水分が侵入すると、内部の電気回路に影響をあたえ、発電効率の低下や故障につながります。 定期的な裏面チェックと、周辺環境の整備が重要です。
裏面破損を防ぐための対策:
- 定期的な草刈りの実施(年3〜4回)
- 竹や笹の根絶対策
- 防草シートの設置
- 架台下の定期点検
輸送時や施工時のトラブルによる破損
太陽光パネルの破損は、設置後だけでなく、輸送時や施工時にも発生することがあります。 これらの破損は、初期不良としてあつかわれることが多いですが、微細な損傷は発見がむずかしく、あとから問題となることもあります。 品質の高い施工業者を選ぶことが、これらのトラブルを防ぐ第一歩となります。
輸送時には、パネルの積みおろしや運搬中の振動により、マイクロクラックが発生することがあります。 また、複数枚のパネルを重ねて運ぶ際に、過度な荷重がかかり、たわみによる品質劣化がおこることもあります。 施工時には、ボルトの締めつけ不足や、端子台の破損、架台の組み立てミスなどが原因となります。
輸送・施工時のトラブルを防ぐポイント:
- 信頼できる施工業者の選定
- 設置前のパネル検査の実施
- 施工時の立ち会い確認
- 完成検査の徹底
太陽光パネル破損で起こる影響
太陽光パネルが破損すると、さまざまな影響が発生します。 単に発電量が低下するだけでなく、火災のリスクや、システム全体への影響など、深刻な問題につながることもあります。 ここでは、太陽光パネル破損によっておこる具体的な影響について解説します。
発電量の低下
太陽光パネルが破損すると、まず直接的な影響として発電量が低下します。 破損の程度により、発電量が規定値より減少する場合と、完全にゼロになってしまう場合があります。 小規模な住宅用太陽光発電では、発電量の変化に気づきやすいですが、メガソーラーなどの大規模施設では、一部のパネルの不具合を早期に発見することがむずかしくなります。
発電量の低下は、売電収入の減少に直結します。 たとえば、50kWの太陽光発電所で10%の発電量低下がおきた場合、年間の売電収入は数十万円減少することになります。 早期発見と対処により、これらの損失を最小限におさえることが重要です。
発電量低下の早期発見方法:
- 遠隔監視システムの導入
- 日々の発電量データの記録と分析
- 天候を考慮した発電量の比較
- 同一条件下での前年同月比較
1枚の故障で1列がすべて発電不可能になる場合も
太陽光パネルは、乾電池とおなじように直列と並列をくみあわせて接続されています。 直列接続されたパネルのうち1枚が故障すると、電流がながれなくなり、その列全体が発電できなくなることがあります。 これは、クリスマスツリーの電飾で1個の電球がきれると、全体が点灯しなくなるのとおなじ原理です。
この現象により、1枚のパネル破損が、想定以上の発電量低下をまねくことがあります。 たとえば、20枚のパネルが直列接続されている場合、1枚の故障で20枚分の発電量が失われる可能性があるのです。 システム設計時に、このリスクを考慮した配線計画が必要となります。
直列接続による影響を最小化する方法:
- バイパスダイオードの適切な配置
- 並列接続の組み合わせによるリスク分散
- 定期的な各列の発電量チェック
- 故障パネルの早期交換
接続方式 | メリット | デメリット |
---|---|---|
直列接続 | 高電圧が得られる | 1枚の故障で全体に影響 |
並列接続 | 故障の影響が限定的 | 配線が複雑になる |
直並列混合 | バランスが良い | 設計が複雑 |
ホットスポットの発生による火災リスク
ホットスポットは、太陽光パネルの一部が異常に発熱する現象です。 破損したセルや、汚れで覆われたセルは発電できないため、ほかのセルから電流がながれこみます。 この電流が熱エネルギーに変換され、100℃をこえる高温になることがあるのです。
ホットスポットの危険性は、火災リスクだけではありません。 高温により、パネル内部の樹脂が劣化し、絶縁性能が低下します。 また、ガラスと金属フレームの熱膨張率のちがいにより、さらなる破損をまねくこともあります。
ホットスポットを防ぐための対策:
- 定期的な赤外線カメラによる温度チェック
- パネル表面の清掃と点検
- 周辺の可燃物の除去
- 異常を発見したら即座に対処
クラスタ故障の可能性
クラスタ故障は、太陽光パネル内の一部のセル群(クラスタ)が、バイパスダイオードのはたらきにより、まるごと発電を停止する現象です。 これは、パネルを過電流から保護するための機能ですが、結果として発電量の大幅な低下をまねきます。 1枚のパネルに3つのクラスタがある場合、1つのクラスタ故障で発電量は約3分の1減少します。
クラスタ故障の特徴は、外観上は正常にみえても、実際には発電していないことです。 そのため、発電量のモニタリングや、専門的な検査機器による診断が必要となります。 早期発見により、被害の拡大を防ぐことができます。
クラスタ故障の診断と対処:
- I-V特性測定による異常検出
- サーモグラフィーによる温度分布確認
- ストリング単位での発電量比較
- 故障パネルの特定と交換
太陽光パネルの破損に対する対応策
太陽光パネルの破損を完全に防ぐことはできませんが、適切な対応策により、リスクを最小限におさえることができます。 定期的な点検とメンテナンス、破損時の迅速な対応、そして保証制度の活用が重要なポイントとなります。 ここでは、具体的な対応策についてくわしく解説します。
定期的な点検とメンテナンスの重要性
太陽光パネルの破損を早期に発見し、被害を最小限におさえるためには、定期的な点検とメンテナンスが不可欠です。 日常的な目視点検から、専門機器をつかった詳細検査まで、段階的な点検体制を構築することが重要です。 また、清掃や周辺環境の整備など、予防的なメンテナンスも破損リスクの低減に効果的です。
点検の頻度と内容は、設置環境や規模によってことなりますが、最低でも年1回の専門業者による点検をおすすめします。 とくに、台風や地震などの自然災害のあとは、臨時点検を実施し、異常がないか確認することが大切です。 早期発見と対処により、修理費用をおさえ、発電ロスを最小限にすることができます。
効果的な点検・メンテナンス計画:
- 日常点検(週1回):外観チェック、発電量確認
- 定期点検(月1回):詳細な目視検査、清掃
- 専門点検(年1〜2回):電気検査、赤外線検査
- 臨時点検:自然災害後、異常発見時
定期点検パックに加入する
太陽光発電の保守管理を専門業者にまかせる「定期点検パック」は、破損の早期発見と対処に有効な選択肢です。 専門知識をもった技術者が、定期的に点検を実施し、異常を早期に発見してくれます。 また、遠隔監視システムとくみあわせることで、24時間365日の監視体制を構築できます。
定期点検パックのサービス内容は業者によってことなりますが、一般的には以下のような内容がふくまれます。 発電量のモニタリング、現地での目視点検、電気的な測定検査、清掃作業、緊急時の駆けつけ対応などです。 費用は規模によりますが、50kW程度の設備で年間10〜20万円程度が相場となっています。
定期点検パック選びのポイント:
- サービス内容と料金の比較
- 緊急対応の有無と対応時間
- 点検頻度と点検項目の確認
- 実績と評判の確認
サービス項目 | 基本プラン | 充実プラン |
---|---|---|
遠隔監視 | ○ | ○ |
定期点検(年4回) | ○ | ○ |
緊急駆けつけ | △(有料) | ○ |
パネル清掃 | × | ○ |
草刈り作業 | × | ○ |
ドローンと赤外線カメラを活用した点検
最新の点検技術として、ドローンに赤外線カメラを搭載した点検方法が実用化されています。 この方法により、広大な太陽光発電所でも、短時間で効率的に異常箇所を発見できます。 赤外線カメラは、温度分布を可視化できるため、ホットスポットやクラスタ故障を容易に発見できるのです。
ドローン点検のメリットは、人がアクセスしにくい場所でも安全に点検できることです。 また、上空からの俯瞰画像により、全体的な設備状況を把握できます。 点検時間も大幅に短縮でき、100kW規模の設備なら30分程度で点検が完了します。
ドローン点検の活用方法:
- 年1〜2回の定期点検に組み込む
- 台風後などの緊急点検で活用
- 点検結果を画像データとして保存
- 経年変化の比較分析に利用
破損したパネルはまるごと交換
太陽光パネルが破損した場合、部分的な修理はできないため、パネルまるごとの交換が必要となります。 これは、パネル内部のセルが樹脂で封止されており、分解修理が不可能な構造になっているためです。 交換作業は、電気工事士の資格をもった専門業者に依頼する必要があります。
交換時には、おなじ型番のパネルを使用することが理想的ですが、製造終了などで入手できない場合もあります。 その場合は、電気的特性が近い代替品を選定する必要があります。 また、1枚だけの交換でも、システム全体のバランスを考慮した作業が必要となります。
パネル交換時の注意点:
- 必ず専門業者に依頼する
- 交換前にシステムを安全に停止
- 同一型番または互換性のあるパネルを使用
- 交換後の動作確認を徹底
パネル交換の費用について
太陽光パネルの交換費用は、初期設置時とくらべて割高になる傾向があります。 これは、少数枚の発注となるため、量産効果がえられないことが主な理由です。 また、既存システムとの互換性確認や、高所作業などの施工費も加算されます。
一般的な交換費用の目安は、パネル1枚あたり5〜10万円程度です。 これには、パネル本体の費用、施工費、諸経費がふくまれます。 ただし、設置場所や枚数、作業の難易度により、費用は大きく変動します。
交換費用の内訳例(1枚あたり):
- パネル本体:3〜5万円
- 施工費:1〜3万円
- 運搬費:0.5〜1万円
- 諸経費:0.5〜1万円
メーカー保証の内容を確認しておく
太陽光パネルには、メーカーによる製品保証と出力保証がついています。 製品保証は、製造上の不具合による故障を保証するもので、一般的に10〜15年の期間が設定されています。 出力保証は、経年劣化による出力低下を保証するもので、25年間で80〜90%の出力を保証することが一般的です。
ただし、メーカー保証には適用条件があり、すべての破損がカバーされるわけではありません。 自然災害や外的要因による破損は、基本的に保証対象外となります。 そのため、火災保険や動産総合保険など、別途の保険加入を検討することが重要です。
保証・保険の使い分け:
- メーカー保証:製造不良、初期不良
- 火災保険:火災、落雷、風水害
- 動産総合保険:盗難、いたずら、破損
- 賠償責任保険:第三者への損害
保証・保険の種類 | 対象となる事故 | 保証期間 |
---|---|---|
メーカー製品保証 | 製造上の不具合 | 10〜15年 |
メーカー出力保証 | 経年による出力低下 | 25年 |
火災保険 | 自然災害全般 | 契約期間中 |
動産総合保険 | 偶発的な事故 | 契約期間中 |
まとめ
太陽光パネルの破損は、外的要因、内的要因、輸送・施工時のトラブルなど、さまざまな原因によって発生します。 カラスによる投石被害や、長期間の汚れによるホットスポットの発生など、意外な原因も多く存在します。 破損による影響は、単なる発電量の低下だけでなく、火災リスクや1列全体の発電停止など、深刻な問題につながる可能性があります。
これらのリスクに対しては、定期的な点検とメンテナンスが最も重要な対策となります。 専門業者による定期点検パックの活用や、ドローンをつかった最新の点検技術の導入により、早期発見と対処が可能です。 また、破損が発生した場合は、迅速にパネル交換をおこない、被害の拡大を防ぐことが大切です。
太陽光発電は、20年以上の長期にわたって運用する設備です。 適切な管理とメンテナンスにより、安定した発電と収益を維持することができます。 本記事で解説した破損原因と対策を参考に、大切な太陽光発電設備を守り、長期的な運用を実現してください。
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