お役立ちコラム 2025.11.10
太陽光パネル処分費1枚いくら?相場と節約術
「太陽光パネルを処分したいけど、1枚あたりいくらかかるの?」
「設置してから20年近く経つけど、撤去費用の総額が心配…」
太陽光発電システムの寿命や、住宅の建て替え、FIT期間の満了などで、太陽光パネルの処分を検討している方は、こうした不安を抱えているのではないでしょうか。
実は、太陽光パネルの処分費用は決して安くありません。
1枚あたり8,500円〜20,000円、一般的な戸建て住宅(15〜20枚設置)では総額25万〜40万円程度が相場です。
しかも、太陽光パネルは鉛やカドミウムなどの有害物質を含むため、一般ごみとして捨てることはできず、産業廃棄物として専門業者に処分を依頼する必要があります。
適切な処分を怠ると、不法投棄として最大3億円の罰金が科される可能性もあります。
また、処分費用は業者によって大きく異なり、相見積もりをせずに1社だけに依頼すると、相場より10万円以上高く払ってしまうこともあるのです。
しかし、正しい知識を持てば、処分費用を大幅に抑えることも可能です。
相見積もりの活用、中古買取やリサイクルの利用、屋根リフォームとの同時実施など、賢い節約術があります。
本記事では、太陽光パネル1枚あたりの処分費用の相場から、費用の内訳、処分の手順、費用を抑えるコツ、そして撤去を検討すべきタイミングと法的注意点まで、2025年最新の情報をもとに徹底解説します。
この記事を最後までお読みいただくことで、太陽光パネルの処分について正しく理解し、無駄な出費を避け、適切に処分できるようになるでしょう。
目次
太陽光パネル処分費の相場と内訳

1枚あたりの相場と戸建ての総額目安
太陽光パネルの処分を検討する際、まず知りたいのが具体的な費用でしょう。
ここでは、1枚あたりの相場と、一般的な戸建て住宅での総額について詳しく解説します。
1枚あたりの処分費用の相場
太陽光パネル1枚あたりの処分費用は、8,500円〜20,000円が一般的な相場です。
この金額には、撤去費用、運搬費用、処分費用などが含まれています。
ただし、この金額はあくまで目安であり、実際の費用は以下のような要因によって大きく変動します。
- パネルの種類(シリコン系、化合物系など)
- 設置場所(屋根、地上)
- 地域(リサイクル施設の有無)
- 業者の規模と処理能力
- 撤去の難易度
最も一般的なシリコン系パネルの場合、1枚あたり10,000円〜15,000円が平均的な金額です。
一方、化合物系パネル(カドミウムテルルなど)は有害物質の処理が複雑なため、15,000円〜20,000円とやや高額になる傾向があります。
戸建て住宅での総額目安
一般的な戸建て住宅では、太陽光パネルを15〜20枚設置していることが多いです。
したがって、処分費用の総額は以下のようになります。
- 15枚の場合:127,500円〜300,000円(平均約200,000円)
- 20枚の場合:170,000円〜400,000円(平均約300,000円)
多くのケースで、25万〜40万円程度が現実的な総額の目安となります。
ただし、この金額は処分費用のみであり、場合によっては以下のような追加費用が発生することもあります。
追加費用が発生するケース
- 足場代:屋根に設置されている場合、安全に作業するための足場設置が必要(10万〜20万円)
- 屋根の修繕費:パネル撤去後、屋根材の穴埋めや修繕が必要な場合(5万〜15万円)
- パワーコンディショナーなど周辺機器の処分:パネル以外の設備も処分する場合(5万〜10万円)
- 廃止届の手続き代行:FIT認定設備の場合、手続きを業者に依頼(1万〜3万円)
これらを含めると、総額が50万円を超えることもあります。
以下の表に、枚数別の処分費用目安をまとめました。
|
設置枚数 |
1枚あたり費用 |
総額目安(処分のみ) |
総額目安(足場・修繕含む) |
|
10枚 |
10,000円〜15,000円 |
10万〜15万円 |
25万〜35万円 |
|
15枚 |
10,000円〜15,000円 |
15万〜22.5万円 |
30万〜42.5万円 |
|
20枚 |
10,000円〜15,000円 |
20万〜30万円 |
35万〜50万円 |
|
25枚 |
10,000円〜15,000円 |
25万〜37.5万円 |
40万〜57.5万円 |
この表から分かるように、設置枚数が増えるほど総額も増加しますが、1枚あたりの単価は大きく変わりません。
むしろ、まとめて処分することで、運搬費用などが効率化され、単価がやや下がるケースもあります。
産業用太陽光発電の場合
ここまでは住宅用(10kW未満)の費用について解説してきましたが、産業用(10kW以上)の場合はさらに高額になります。
産業用の場合、1kWあたり約20,000円〜30,000円が相場です。
例えば、50kWの産業用太陽光発電設備を処分する場合、100万〜150万円の費用がかかります。
さらに、地上設置の場合は基礎(スクリューなど)の撤去費用も加わり、1kWあたり10,000円程度の追加費用が発生します。
したがって、50kWの設備で基礎撤去まで行う場合、総額で150万〜200万円という高額な費用になることもあります。
費用相場を把握する重要性
太陽光パネルの処分費用は、業者によって大きく異なります。
相場を知らずに1社だけに依頼すると、相場より高い金額を請求されても気づかない可能性があります。
逆に、極端に安い業者は、適切な処分を行わない悪質業者の可能性もあります。
したがって、まずは相場をしっかり把握し、複数の業者から見積もりを取って比較することが重要です。
撤去・運搬・処理の費用内訳と変動要因
太陽光パネルの処分費用は、大きく分けて撤去費用、運搬費用、処理費用の3つで構成されています。
ここでは、それぞれの内訳と、費用が変動する要因について詳しく解説します。
撤去費用:10万〜20万円
撤去費用とは、屋根や地上から太陽光パネルを取り外すためにかかるコストです。
処分費用全体の中で最も大きな割合を占める部分で、総額の40〜60%程度を占めます。
撤去費用には、以下のような作業が含まれます。
撤去作業の内容
- 足場の設置(屋根設置の場合)
- パネルの接続部分の取り外し
- パネルを1枚ずつ慎重に下ろす作業
- 架台の取り外し
- 配線の撤去
- 足場の解体
屋根に設置されている場合、作業員が安全に作業できるよう足場を組む必要があります。
足場代は1㎡あたり700円〜1,000円程度が相場で、一般的な住宅では10万〜15万円程度かかります。
また、撤去作業そのものにかかる工賃と人件費を合わせると、1枚あたり5,000円〜10,000円が平均的な金額です。
撤去費用が高くなる要因には、以下のようなものがあります。
撤去費用が高くなる要因
- 屋根の形状が複雑:切妻屋根より寄棟屋根の方が作業が難しい
- 屋根の傾斜が急:急勾配の屋根は危険度が高く、作業時間もかかる
- 設置場所が高い:3階建て以上の建物は足場代が高額
- パネルの固定方法が複雑:特殊な工法で固定されている場合
- 老朽化による破損リスク:古いパネルは取り外し時に破損しやすい
運搬費用:2万〜3万円
運搬費用とは、撤去した太陽光パネルを処理施設まで運ぶためのコストです。
太陽光パネルは重量があり(1枚15〜20kg程度)、かつ割れやすいため、専用の運搬車両で慎重に運ぶ必要があります。
運搬費用は、以下の要因で変動します。
運搬費用の変動要因
- 運搬距離:処理施設までの距離が遠いほど高額
- 運搬量:パネルの枚数が多いほど車両が大型化し、費用が上がる
- 地域:都市部より地方の方が処理施設が少なく、運搬距離が長くなりがち
- 道路状況:狭い道や山間部は運搬が困難で追加費用が発生
一般的な戸建て住宅(20枚程度)の場合、運搬費用は2万〜3万円が相場です。
ただし、離島や山間部など、処理施設までの距離が遠い地域では、5万円以上かかることもあります。
処理費用:3万〜5万円
処理費用とは、太陽光パネルを産業廃棄物として適切に処理するためのコストです。
太陽光パネルは、鉛やカドミウムなどの有害物質を含むため、一般ごみとして処分できません。
専門の処理施設で、以下のような工程を経て処理されます。
処理の工程
- パネルの分解
- ガラス、アルミフレーム、金属、シリコンなどへの分離
- 有害物質の適切な処理
- リサイクル可能な素材の回収
処理費用は、1枚あたり1,200円〜5,000円が相場です。
一般的な住宅用パネル(20枚)の場合、処理費用の総額は2.4万〜10万円程度となります。
ただし、多くのケースでは3万〜5万円の範囲に収まります。
処理費用が変動する要因は、以下の通りです。
処理費用の変動要因
- パネルの種類:シリコン系は比較的安価、化合物系(カドミウムテルルなど)は高額
- 処理業者の規模:大手業者は大量処理が可能で単価が安い
- リサイクル率:リサイクル可能な素材が多いほど処理費が下がる
- 地域の処理体制:リサイクル施設が充実している地域は費用が安い
全国的な平均値
撤去、運搬、処理の3つを合計すると、1枚あたり約15,000円が全国的な平均値です。
以下の表に、費用内訳の目安をまとめました。
|
費用項目 |
1枚あたり |
20枚の場合 |
割合 |
|
撤去費用 |
5,000円〜10,000円 |
10万〜20万円 |
40〜60% |
|
運搬費用 |
1,000円〜1,500円 |
2万〜3万円 |
10〜15% |
|
処理費用 |
1,200円〜5,000円 |
2.4万〜10万円 |
15〜30% |
|
合計 |
約15,000円 |
約30万円 |
100% |
この表から、撤去費用が最も大きな割合を占めることが分かります。
したがって、費用を抑えるためには、撤去作業を効率化できる業者を選ぶことが重要です。
2030年以降の費用上昇リスク
2012年のFIT制度開始から急増した太陽光発電設備の多くは、2030年代に寿命を迎えます。
したがって、2030年以降は大量のパネルが一斉に処分されることが予想されています。
廃棄量の急増に伴い、処理施設の処理能力が追いつかず、処分費用が大幅に上昇する懸念が指摘されています。
また、建設業に従事する職人の高齢化と人手不足により、労務費のさらなる上昇も避けられないでしょう。
したがって、将来的には現在の相場より数割高い費用がかかる可能性があります。
処分を検討している方は、費用が上昇する前に、早めに対応することも選択肢の一つです。
処分の手順と費用を抑えるコツ

見積もりから撤去・申請までの進め方
太陽光パネルを処分する際の具体的な手順について、詳しく解説します。
ステップ1:業者への問い合わせと見積もり依頼
まず、太陽光パネルの処分を扱う業者に問い合わせます。
業者には、以下のような種類があります。
処分を依頼できる業者
- 太陽光パネル設置業者:設置を担当した業者が最も事情を把握している
- 解体業者:建物の解体と同時に処分する場合
- 産業廃棄物処理業者:パネル処分を専門に扱う業者
- 屋根リフォーム業者:屋根工事と同時に処分する場合
問い合わせの際は、以下の情報を伝えるとスムーズです。
- パネルの設置枚数
- パネルのメーカーと型番
- 設置場所(屋根、地上)
- 設置年数
- 処分の理由(FIT満了、故障、建て替えなど)
- 希望する処分時期
業者は、これらの情報をもとに、概算見積もりを提示します。
ただし、正確な金額を出すには、現地調査が必要です。
ステップ2:現地調査
概算見積もりに納得できたら、業者に現地調査を依頼します。
現地調査では、以下のような項目を確認します。
現地調査の確認項目
- パネルの設置状況(枚数、配置、固定方法)
- 屋根の状態(傾斜、材質、劣化具合)
- 足場の設置スペースの有無
- 周辺環境(隣家との距離、道路幅など)
- パネル以外の設備(パワーコンディショナー、配線など)
現地調査には、通常30分〜1時間程度かかります。
調査結果をもとに、業者は正式な見積もりを作成します。
ステップ3:契約締結
見積もり内容に納得できたら、契約を締結します。
契約前に、以下の点を必ず確認しましょう。
契約前の確認事項
- 見積もり金額の内訳が明確か
- 追加費用が発生する条件は何か
- 作業期間と完了予定日
- 保険の加入状況(作業中の事故に対する補償)
- 処分方法(リサイクルか埋め立てか)
- 産業廃棄物収集運搬業の認可を持っているか
- マニフェスト(産業廃棄物管理票)を発行するか
特に、産業廃棄物収集運搬業の認可は必須です。
認可を持たない業者に依頼すると、不法投棄のリスクがあり、依頼主も罰せられる可能性があります。
ステップ4:撤去作業
契約締結後、撤去作業が開始されます。
作業の流れは、以下の通りです。
- 足場の設置(屋根設置の場合)
- パネルの接続部分の取り外し
- パネルを1枚ずつ下ろす
- 架台の取り外し
- 配線の撤去
- パワーコンディショナーなど周辺機器の撤去(希望する場合)
- 屋根の点検と必要に応じて修繕
- 足場の解体
作業期間は、住宅用の場合1〜3日程度が一般的です。
産業用の場合は、規模によって1週間以上かかることもあります。
作業中は、業者との連絡を密に取り、トラブルがないか確認しましょう。
ステップ5:運搬と処分
撤去した太陽光パネルは、業者が処理施設まで運搬し、適切に処分します。
処分後、業者から**マニフェスト(産業廃棄物管理票)**を受け取ります。
マニフェストは、廃棄物が適切に処理されたことを証明する重要な書類です。
5年間保管する義務があるため、大切に保管しましょう。
ステップ6:FIT認定の廃止届提出(該当者のみ)
FIT制度(固定価格買取制度)の認定を受けて太陽光発電を設置した方は、システムを撤去・処分する際に廃止届を提出する義務があります。
廃止届の提出は法律で義務付けられており、手続きを怠ると罰則の対象になるケースもあります。
廃止届は、経済産業省の再生可能エネルギー電子申請システムから提出できます。
手続きは複雑なため、業者に代行を依頼することもできます(手数料1万〜3万円程度)。
以下の表に、処分の手順とスケジュールをまとめました。
|
ステップ |
内容 |
期間 |
|
1.問い合わせ |
業者への連絡・概算見積もり |
1〜3日 |
|
2.現地調査 |
詳細確認・正式見積もり |
1週間〜2週間 |
|
3.契約締結 |
契約書の確認と署名 |
1日 |
|
4.撤去作業 |
パネル取り外し・運搬 |
1〜3日 |
|
5.処分 |
処理施設での処分 |
業者が実施 |
|
6.廃止届提出 |
FIT認定の廃止手続き |
1週間程度 |
全体として、問い合わせから処分完了まで、3週間〜1ヶ月程度が目安です。
相見積もりと買取・リサイクル活用術
太陽光パネルの処分費用を抑えるための具体的な方法について解説します。
相見積もりで費用を比較する
処分費用を抑える最も効果的な方法が、**複数の業者から見積もりを取る「相見積もり」**です。
太陽光パネルの処分費用は、業者によって10万円以上の差が出ることも珍しくありません。
相見積もりのメリットは、以下の通りです。
相見積もりのメリット
- より安い業者を選択できる
- 費用の相場を確認できる
- 業者間で価格競争が生まれ、値引き交渉がしやすくなる
- 悪質業者を見抜きやすくなる
相見積もりは、3〜5社程度に依頼するのがおすすめです。
1社だけでは比較できず、逆に多すぎると比較検討に時間がかかりすぎます。
また、自宅から近い業者を選ぶことで、運搬費用を抑えることもできます。
相見積もりを依頼する際は、以下の点に注意しましょう。
相見積もりの注意点
- すべての業者に同じ条件を伝える
- 見積もり内容の内訳を確認する
- 追加費用の有無を確認する
- 極端に安い業者は要注意(適切な処分をしない可能性)
太陽光発電協会が作成した施工業者一覧を参考にすると、信頼できる業者を見つけやすいです。
中古買取で処分費用を削減
太陽光パネルは、状態が良ければ中古品として買い取ってもらえる場合があります。
買取額は、1枚あたり5,000円〜10,000円程度が相場です。
20枚の場合、10万〜20万円の買取収入が得られる可能性があります。
この買取額を処分費用に充てれば、実質的な負担を大幅に削減できます。
場合によっては、買取額が処分費用を上回り、お金を受け取れることもあります。
買取の対象となるのは、以下のような条件を満たすパネルです。
買取対象となる条件
- 製造から10年以内(遅くとも15年以内)
- 国内メーカー製(海外メーカーは買取価格が低い)
- 破損や変色がない
- 発電効率が80%以上を維持している
- 人気メーカー(パナソニック、シャープ、京セラなど)
逆に、以下のような場合は買取が難しくなります。
- 設置から20年以上経過している
- 破損やひび割れがある
- 発電効率が大幅に低下している
- 中国製など安価なメーカー
買取を希望する場合は、太陽光パネル専門の買取業者に相談しましょう。
撤去業者の中には、買取にも対応している業者があるため、見積もり時に確認することをおすすめします。
リサイクル業者を活用する
太陽光パネルには、ガラス、アルミフレーム、シリコン、銅などのリサイクル可能な素材が多く含まれています。
現在の技術では、太陽光パネルの約95%がリサイクル可能とされています。
リサイクル業者に処分を依頼すると、通常の廃棄処分より費用が安くなるケースが多いです。
リサイクル費用の目安は、1枚あたり1,200円程度です。
20枚の場合、リサイクル費用は約2.4万円となり、通常の処分費用(3万〜5万円)より安く済みます。
ただし、リサイクル業者は地域によって数が限られているため、近くにない場合は運搬費用が高くなる可能性があります。
屋根リフォームと同時に実施する
屋根のリフォーム(葺き替えやカバー工法)を計画している場合、太陽光パネルの撤去を同時に行うことで費用を削減できます。
屋根リフォームでは足場を組むため、この足場を太陽光パネルの撤去にも利用すれば、足場代を二重にかけずに済みます。
足場代は10万〜20万円かかるため、これを節約できるメリットは大きいです。
また、屋根リフォーム業者の中には、太陽光パネルの撤去もセットで割引価格で提供しているところがあります。
以下の表に、費用を抑える方法と削減効果をまとめました。
|
方法 |
削減効果 |
注意点 |
|
相見積もり |
5万〜15万円 |
3〜5社比較が目安 |
|
中古買取 |
10万〜20万円(買取収入) |
状態が良いパネルのみ |
|
リサイクル業者 |
1万〜3万円 |
近くに業者がない場合は効果薄 |
|
屋根リフォームと同時 |
10万〜20万円(足場代節約) |
リフォーム予定がある場合のみ |
これらの方法を組み合わせることで、20万円以上の費用削減も可能です。
撤去の判断基準と法的注意点

撤去を検討するタイミング(FIT満了・故障・建替え等)
太陽光パネルをいつ撤去すべきか、判断に迷う方も多いでしょう。
ここでは、撤去を検討すべきタイミングと判断基準について解説します。
タイミング1:FIT期間の満了
FIT制度(固定価格買取制度)の買取期間が満了したタイミングは、撤去を検討する一つの節目です。
住宅用(10kW未満)の場合、買取期間は10年間です。
産業用(10kW以上)の場合は20年間です。
FIT期間が満了すると、売電価格が大幅に下がります。
FIT期間中は16円〜48円/kWhで買い取られていた電力が、期間満了後は6円〜10円/kWh程度まで下がります。
この状態を「卒FIT」と呼びます。
卒FIT後も発電自体は続けられますが、経済的メリットは大幅に低下します。
したがって、以下のような場合は撤去を検討する価値があります。
- パネルが老朽化しており、メンテナンス費用がかかる
- 発電効率が低下しており、売電収入が期待できない
- 屋根の劣化が進んでおり、リフォームを検討している
逆に、パネルの状態が良好で、自家消費による電気代削減効果が見込める場合は、継続使用も選択肢です。
タイミング2:発電効率の大幅な低下
太陽光パネルは、年月とともに発電効率が徐々に低下します。
一般的に、年間0.5〜1%程度の劣化が進むとされています。
発電効率が設置時より25%以上低下し、75%を下回った場合は、撤去または交換を検討する目安です。
具体的には、以下のような兆候があれば要注意です。
発電効率低下の兆候
- 設置当初に比べて明らかに発電量が減っている
- 同じ日照条件でも、以前より発電しない
- 電気代削減効果が薄れてきた
- 売電収入が年々減少している
発電効率の低下を確認するには、発電量のモニタリングが有効です。
パワーコンディショナーや専用モニターで、毎月の発電量を記録し、前年同月と比較しましょう。
タイミング3:設置後20〜25年の経過
太陽光パネルの一般的な寿命は、20〜30年とされています。
設置後20年以上が経過している場合は、撤去を積極的に検討すべき時期です。
この時期になると、以下のようなリスクが高まります。
- パネルの破損・ひび割れ
- 防水シールの劣化による雨漏り
- 架台の腐食・変形
- 配線の劣化による火災リスク
特に、屋根に設置している場合、パネルの重量(15〜20kg/枚)が長年にわたって屋根に負荷をかけ続けています。
老朽化したパネルを放置すると、屋根材の損傷や雨漏りの原因となります。
タイミング4:故障や破損
パネルが故障したり、台風や地震などで破損したりした場合は、撤去を検討するタイミングです。
特に、以下のような状況では速やかな対応が必要です。
- パネルが割れている
- フレームが変形している
- 配線が露出している
- 火災や漏電のリスクがある
破損したパネルは、感電のリスクがあるため、自分で触らず、専門業者に連絡しましょう。
タイミング5:建物の建て替えや売却
住宅の建て替えや売却を予定している場合、太陽光パネルの撤去が必要になります。
建て替えの場合、解体業者が太陽光パネルの撤去も一括で行ってくれることが多いです。
この場合、解体費用に太陽光パネルの撤去費用が含まれるため、別途業者を手配する必要がありません。
ただし、事前に太陽光パネルの設置を伝え、撤去も可能かどうか確認しておきましょう。
売却の場合は、太陽光パネルをそのまま残すか、撤去するかを判断する必要があります。
太陽光パネル付きの住宅は、電気代削減というメリットがある一方、老朽化したパネルはマイナス要因になることもあります。
不動産業者と相談し、どちらが有利か判断しましょう。
タイミング6:屋根のリフォーム
屋根の葺き替えやカバー工法などのリフォームを行う際は、太陽光パネルを一旦撤去する必要があります。
この場合、脱着費用として35万〜45万円程度がかかります。
脱着とは、撤去して屋根リフォーム後に再設置することです。
しかし、老朽化したパネルを再設置しても、残りの使用期間が短く、費用対効果が悪いケースがあります。
したがって、以下のような条件に当てはまる場合は、再設置せずに処分することも検討しましょう。
- 設置から15年以上経過している
- 発電効率が大幅に低下している
- メーカー保証が切れている
以下の表に、撤去を検討すべきタイミングをまとめました。
|
タイミング |
判断基準 |
優先度 |
|
FIT満了 |
10年or20年経過 |
中 |
|
発電効率低下 |
75%以下に低下 |
高 |
|
設置後20年超 |
寿命に近づいている |
高 |
|
故障・破損 |
安全リスクあり |
最優先 |
|
建て替え・売却 |
住宅の状況変化 |
必須 |
|
屋根リフォーム |
工事の必要性 |
中〜高 |
自分の状況がどのタイミングに当てはまるかを確認し、適切に判断しましょう。
認可業者の選び方と必要届出・補助金返還の留意点
太陽光パネルの処分には、法的な注意点があります。
ここでは、業者の選び方と必要な手続きについて解説します。
認可業者の選び方
太陽光パネルは産業廃棄物であるため、処分には産業廃棄物収集運搬業の認可を持った業者に依頼する必要があります。
認可を持たない業者に依頼すると、不法投棄のリスクがあり、依頼主も法的責任を問われる可能性があります。
不法投棄の罰則は非常に厳しく、以下のようになっています。
不法投棄の罰則
- 個人:5年以下の懲役、1,000万円以下の罰金、またはこれらの併科
- 法人:3億円以下の罰金
認可業者を選ぶ際は、以下の点を確認しましょう。
認可業者の確認ポイント
- 産業廃棄物収集運搬業の許可証を持っているか
- 許可番号を明示しているか
- **マニフェスト(産業廃棄物管理票)**を発行するか
- 処理施設の場所と処理方法を説明できるか
- 実績と口コミが確認できるか
許可証は、業者のホームページや事務所に掲示されているはずです。
不明な場合は、直接業者に確認しましょう。
また、太陽光発電協会の施工業者一覧を参考にすると、信頼できる業者を見つけやすいです。
FIT認定の廃止届
FIT制度の認定を受けて太陽光発電システムを設置した方は、撤去・処分する際に廃止届を提出する義務があります。
廃止届は、経済産業省の再生可能エネルギー電子申請システムから提出します。
提出期限は、撤去完了後速やかにとされています。
手続きを怠ると、以下のようなリスクがあります。
- 行政指導や罰則の対象となる可能性
- 次に太陽光発電を設置する際に、認定が受けられなくなる可能性
廃止届の提出には、以下の情報が必要です。
- FIT認定番号
- 設備の設置場所
- 廃止年月日
- 廃止の理由
手続きが複雑で不安な場合は、業者に代行を依頼することもできます(手数料1万〜3万円程度)。
補助金を受けた場合の返還義務
太陽光発電システムを設置する際に、国や自治体の補助金を受けた場合、撤去時に返還義務が発生する可能性があります。
多くの補助金制度では、一定期間の使用継続が条件とされています。
例えば、「10年間は使用を継続すること」という条件がある場合、10年未満で撤去すると、補助金の全部または一部を返還する必要があります。
返還額は、以下のような計算式で算出されることが一般的です。
返還額 = 補助金額 × (残存期間 ÷ 義務期間)
例えば、50万円の補助金を受け、10年の使用義務があるのに7年で撤去した場合:
返還額 = 50万円 × (3年 ÷ 10年) = 15万円
補助金を受けた際の書類を確認し、使用義務期間と返還条件を把握しておきましょう。
不明な場合は、補助金を交付した自治体や団体に問い合わせてください。
屋根の修繕責任
太陽光パネルを長期間設置していた場合、パネルの取り付け部分や周辺の屋根材が損傷している可能性があります。
特に、パネルの架台を固定するために屋根に穴を開けている場合、これらの部分が劣化していたり、雨漏りの原因となっていることがあります。
パネル撤去後には、必ず屋根材の状態を確認し、必要に応じて修理を行うことが重要です。
修繕費用は、5万〜15万円程度が相場です。
また、屋根材が塗装されている場合、太陽光パネルの撤去後に塗装の剥がれや色むらが目立つことがあります。
このような場合、屋根全体の再塗装を検討することで、屋根の防水性能を高め、耐久性を向上させることができます。
以下の表に、法的手続きと注意点をまとめました。
|
項目 |
内容 |
期限・条件 |
罰則・リスク |
|
認可業者への依頼 |
産業廃棄物収集運搬業の許可業者 |
必須 |
不法投棄で3億円以下の罰金 |
|
マニフェスト保管 |
産業廃棄物管理票 |
5年間保管 |
行政指導の対象 |
|
FIT廃止届 |
経産省への届出 |
撤去後速やかに |
行政指導・罰則の可能性 |
|
補助金返還 |
使用義務期間の確認 |
補助金により異なる |
返還義務発生 |
|
屋根修繕 |
撤去後の点検・修理 |
推奨 |
雨漏りリスク |
これらの法的手続きと注意点を守ることで、トラブルなく太陽光パネルを処分できます。
まとめ

太陽光パネルの処分費用と手順について、詳しく解説してきました。
最後に、重要なポイントをまとめます。
処分費用の相場
太陽光パネルの処分費用は、1枚あたり8,500円〜20,000円が相場です。
一般的な戸建て住宅(15〜20枚設置)では、総額25万〜40万円程度が目安となります。
費用は、撤去費用、運搬費用、処分費用の3つで構成され、撤去費用が最も大きな割合を占めます。
足場代や屋根の修繕費など追加費用が発生することもあり、総額が50万円を超えるケースもあります。
費用の変動要因
処分費用は、パネルの種類、設置場所、地域、業者の規模などによって大きく変動します。
特に、業者による価格差は大きく、相見積もりをしないと10万円以上高く払ってしまうリスクがあります。
また、2030年以降は大量廃棄により処分費用が上昇する懸念もあります。
処分の手順
処分は、業者への問い合わせ、現地調査、契約締結、撤去作業、運搬・処分、FIT廃止届提出という流れで進みます。
全体として、3週間〜1ヶ月程度が目安です。
重要なのは、産業廃棄物収集運搬業の認可を持った業者に依頼することです。
認可のない業者に依頼すると、不法投棄のリスクがあり、依頼主も罰せられる可能性があります。
費用を抑えるコツ
処分費用を抑えるには、以下の方法が有効です。
- 相見積もり:3〜5社から見積もりを取り比較(削減効果5万〜15万円)
- 中古買取:状態の良いパネルは買取してもらう(収入10万〜20万円)
- リサイクル業者活用:通常処分より安価(削減効果1万〜3万円)
- 屋根リフォームと同時実施:足場代を節約(削減効果10万〜20万円)
これらを組み合わせることで、20万円以上の費用削減も可能です。
撤去を検討すべきタイミング
以下のような状況では、撤去を検討する価値があります。
- FIT期間が満了した
- 発電効率が75%以下に低下した
- 設置後20年以上経過している
- 故障や破損がある
- 建物の建て替えや売却を予定している
- 屋根のリフォームが必要
自分の状況を確認し、適切なタイミングで判断しましょう。
法的注意点
太陽光パネルの処分には、法的な注意点があります。
- 産業廃棄物として適切に処分する(自己処分は違法)
- 認可業者に依頼する
- マニフェストを5年間保管する
- FIT認定設備は廃止届を提出する
- 補助金を受けた場合、返還義務の有無を確認する
これらの手続きを怠ると、罰則や行政指導の対象となる可能性があります。
最後に
太陽光パネルの処分は、決して安くはありませんが、適切に対応することで費用を抑え、トラブルを避けることができます。
本記事で解説した内容を参考に、相場を把握し、複数の業者を比較し、信頼できる業者を選んでください。
また、中古買取やリサイクルなどの選択肢も積極的に検討しましょう。
太陽光パネルは、クリーンなエネルギーを生み出してくれた大切な設備です。
寿命を迎えたからといって、不適切に処分されることがあってはなりません。
適切な処分を行うことで、環境を守り、リサイクル可能な資源を有効活用することができます。
あなたの太陽光パネルが、最後まで社会に貢献できるよう、正しい処分を心がけてください。
この記事が、あなたの太陽光パネル処分の一助となれば幸いです。
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