太陽光と蓄電池とは？仕組みと活用法を解説

電気代の値上がりが続くなか、太陽光発電や蓄電池への関心が高まっています。

「太陽光で発電した電気を蓄電池にためて使う」という話は聞いたことがあっても、具体的なしくみがわからないという方は多いのではないでしょうか。

じつは、太陽光発電と蓄電池を上手に組み合わせることで、電気代の削減はもちろん、停電時のそなえとしても大きな効果を発揮します。

この記事では、太陽光発電と蓄電池それぞれの基本的なしくみから、両者を連携させたときの電気の流れ、さらには導入のメリットや注意点まで、くわしく解説していきます。

はじめて検討される方にもわかりやすいよう、専門用語はかみくだいて説明しますので、ぜひ最後までお読みください。

太陽光発電と蓄電池の基礎知識

太陽光発電と蓄電池を組み合わせて活用するためには、まずそれぞれの設備について理解しておくことが大切です。

ここでは、蓄電池がどのような役割をもつ設備なのか、そして太陽光発電がどのようなしくみで電気をつくり出すのかを、基礎からていねいに解説します。

両者の特徴をしっかり押さえておくことで、このあとの「組み合わせによる効果」がより深く理解できるようになります。

蓄電池とはどんな設備か

蓄電池とは、電気をためておき、必要なときに取り出して使える設備のことです。

身近なところでは、スマートフォンやノートパソコンに内蔵されているバッテリーも蓄電池のひとつといえます。

家庭用の蓄電池は、これらよりもはるかに大きな容量をもち、住宅全体の電力をまかなえるだけの性能をそなえています。

蓄電池の基本的なはたらきは、「充電」と「放電」の2つです。

電気が余っているときや電気代が安い時間帯に充電しておき、電気を多く使う時間帯や電気代が高い時間帯に放電して使うことで、電力の有効活用が可能になります。

家庭用蓄電池には、おもに以下のような種類があります。

種類	特徴	おもな用途
リチウムイオン電池	小型・軽量で長寿命、充放電の効率が高い	家庭用蓄電池の主流
鉛蓄電池	価格が安く、技術が確立されている	産業用・バックアップ電源
ニッケル水素電池	安全性が高く、環境負荷が低い	ハイブリッドカー・一部の家庭用

現在、家庭用として最も普及しているのはリチウムイオン電池です。

リチウムイオン電池は、エネルギー密度が高いためコンパクトなサイズで大容量を実現できます。

また、充電と放電をくり返しても劣化しにくく、10年以上の使用にも耐えられる製品が多くなっています。

蓄電池の容量は「kWh（キロワットアワー）」という単位であらわされます。

たとえば、容量が10kWhの蓄電池であれば、1,000Wの家電製品を10時間使える計算になります。

一般的な家庭で使用される蓄電池の容量は、5kWhから15kWh程度が多く、家族の人数や電力の使用量に応じて選ぶことが大切です。

蓄電池を導入する際には、以下のポイントを確認しておくとよいでしょう。

• 容量：ふだんの電力使用量や停電時にどこまでカバーしたいかで決める
• 出力：同時に使える電力の上限（大きいほど多くの家電を動かせる）
• サイクル寿命：充放電をくり返せる回数の目安
• 設置場所：屋内用か屋外用か、スペースの確保が必要
• 保証期間：メーカーによって10年から15年程度の保証がつくことが多い

このように、蓄電池は電気をためて自由なタイミングで使える便利な設備です。

太陽光発電と組み合わせることで、その効果はさらに大きくなります。

太陽光発電の基本的な仕組み

太陽光発電とは、太陽の光エネルギーを電気に変換するしくみのことです。

屋根などに設置されたソーラーパネル（太陽電池モジュール）が太陽光を受けて発電し、その電気を家庭で使用できるかたちに変えて供給します。

太陽光発電のしくみを理解するうえで、まず知っておきたいのが「光電効果」という現象です。

光電効果とは、光が物質にあたったときに電子が飛び出す現象のことで、ソーラーパネルはこの原理を利用しています。

ソーラーパネルの内部には、シリコンなどの半導体でつくられた「太陽電池セル」がならんでいます。

太陽光がこのセルにあたると、半導体のなかで電子が動き出し、電流が発生します。

こうして生まれた電気は「直流電力」とよばれるタイプの電気です。

しかし、家庭で使用する電気は「交流電力」なので、そのままでは使えません。

そこで登場するのが「パワーコンディショナー（パワコン）」という機器です。

パワーコンディショナーは、太陽光パネルで発電した直流電力を、家庭で使える交流電力に変換する役割をもっています。

太陽光発電システムの主な構成機器は以下のとおりです。

機器名	役割
ソーラーパネル（太陽電池モジュール）	太陽光を受けて直流電力を発生させる
パワーコンディショナー	直流電力を交流電力に変換する
接続箱	複数のパネルからの配線をまとめる
分電盤	家庭内の各コンセントや機器に電気を分配する
電力量計（メーター）	発電量や売電量・買電量を計測する

太陽光発電の発電量は、パネルの設置容量と日照条件によって大きく変わります。

たとえば、4kWのシステムを設置した場合、年間で約4,000kWhから4,800kWh程度の発電が見込めるのが一般的です。

ただし、この発電量は地域や屋根の向き、傾斜角度、周囲の日かげの影響などによって変動します。

太陽光発電のメリットとしては、以下の点があげられます。

• 発電時にCO2を排出しないクリーンなエネルギー
• 電気代の削減につながる
• 余った電気は電力会社に売却できる（売電）
• 国や自治体の補助金が利用できる場合がある

一方で、太陽光発電だけでは解決できない課題もあります。

それは、発電できるのは日中の太陽が出ている時間帯にかぎられるという点です。

夜間や曇り・雨の日には発電量が大幅に減少するため、電力会社からの電気（買電）に頼らざるをえません。

また、日中に発電した電気を夜間に使いたいと思っても、電気はそのままではためておくことができません。

この課題を解決するのが、蓄電池との組み合わせなのです。

太陽光発電でつくった電気を蓄電池にためておけば、発電していない時間帯でも太陽光由来の電気を使うことができるようになります。

太陽光と蓄電池を組み合わせた電気の流れ

太陽光発電と蓄電池は、それぞれ単独でも役立つ設備ですが、両者を組み合わせることで相乗効果が生まれます。

このセクションでは、太陽光でつくった電気がどのように流れ、蓄電池にたくわえられ、家庭で使用されるのかを具体的に解説します。

また、近年注目されている「ハイブリッド型システム」についても、その特徴やメリットをくわしく紹介していきます。

発電から利用までの仕組み

太陽光発電と蓄電池を連携させたシステムでは、電気の流れが時間帯や電力の使用状況に応じて自動的に切り替わります。

ここでは、一日のなかで電気がどのように流れていくのかを、時間帯別に見ていきましょう。

【朝〜日中：発電がはじまる時間帯】

太陽が昇りはじめると、ソーラーパネルが太陽光を受けて発電をスタートします。

このとき、発電した電気はまず家庭内で使用されている電力をまかなうことにあてられます。

たとえば、冷蔵庫やエアコン、照明などが動いていれば、太陽光の電気がそこに供給されます。

家庭での消費電力よりも発電量が上まわった場合、余った電気は蓄電池への充電にまわされます。

蓄電池が満充電になってもなお電気が余る場合は、電力会社へ売電されるしくみです。

【夕方〜夜間：発電が止まる時間帯】

太陽が沈むと発電はストップしますが、家庭ではむしろ電力の使用量が増える時間帯です。

帰宅後にテレビや照明、エアコンなどを使い、料理や入浴で電気を消費します。

このとき活躍するのが、日中にためておいた蓄電池の電気です。

蓄電池から放電することで、買電にたよらずに電力をまかなえます。

蓄電池の残量がなくなった場合は、電力会社からの電気を購入して使うことになります。

【深夜〜早朝：電気代が安い時間帯】

電力会社のプランによっては、深夜の電気代が日中よりも安く設定されている場合があります。

こうしたプランを契約している家庭では、深夜に蓄電池を充電しておき、電気代が高い日中に蓄電池の電気を使うという方法も有効です。

太陽光発電と組み合わせれば、深夜電力と太陽光発電の両方で蓄電池を充電できるため、より柔軟な電力運用が可能になります。

以下の表は、時間帯ごとの電気の流れをまとめたものです。

時間帯	太陽光発電	蓄電池の動き	電力の供給元
朝〜日中	発電中	余剰電力を充電	太陽光発電
夕方〜夜間	発電停止	放電して電力供給	蓄電池
深夜〜早朝	発電停止	電力会社から充電（プランによる）	電力会社

このように、太陽光発電と蓄電池を連携させることで、発電した電気を無駄なく活用できます。

自家消費率（発電した電気のうち自宅で使う割合）を高めることで、売電にたよるよりも経済的なメリットが大きくなるケースが増えています。

とくに売電価格が下がっている現在では、「つくった電気はためて自分で使う」という考え方が主流になりつつあります。

ハイブリッド型システムの特徴

太陽光発電と蓄電池を組み合わせるシステムには、大きく分けて**「単機能型」と「ハイブリッド型」**の2種類があります。

どちらを選ぶかによって、システムの効率や設置コストが変わってくるため、それぞれの特徴をしっかり理解しておきましょう。

【単機能型システムとは】

単機能型システムでは、太陽光発電用と蓄電池用のパワーコンディショナーがそれぞれ別々に設置されます。

太陽光発電で発電した直流電力は、まず太陽光用パワコンで交流電力に変換されます。

その電気を蓄電池にためる場合は、蓄電池用パワコンでふたたび直流電力に変換して充電します。

放電するときには、また交流電力に変換しなおす必要があります。

つまり、電力の変換が複数回おこなわれるため、変換ロスが発生しやすいのがデメリットです。

一般的に、1回の変換で約5%から10%程度のロスが生じるといわれています。

ただし、すでに太陽光発電システムを設置している家庭に蓄電池をあとから追加する場合は、単機能型を選ぶケースが多くなります。

【ハイブリッド型システムとは】

ハイブリッド型システムでは、太陽光発電と蓄電池の制御を1台のパワーコンディショナーで一括しておこないます。

太陽光パネルで発電した直流電力を、直流のまま蓄電池に充電できるため、変換回数を減らして効率アップが期待できます。

具体的には、単機能型とくらべて充放電効率が約10%から15%向上するといわれています。

これは年間で見ると、かなりの電力量の差になります。

また、機器が1台で済むため設置スペースが少なくてすむというメリットもあります。

以下の表は、単機能型とハイブリッド型のおもな違いをまとめたものです。

項目	単機能型	ハイブリッド型
パワコンの台数	2台（太陽光用・蓄電池用）	1台で兼用
変換効率	やや低い（変換回数が多い）	高い（変換回数が少ない）
設置スペース	広め	省スペース
初期費用	蓄電池後付けの場合は安くなることも	新規導入の場合はお得になりやすい
おすすめの場面	既存の太陽光に蓄電池を追加	太陽光と蓄電池を同時に新設

ハイブリッド型システムのメリットをまとめると、以下のようになります。

• 変換ロスが少なく、発電した電気を効率よく使える
• 機器が1台なのでメンテナンスがしやすい
• 停電時の切り替えがスムーズにおこなわれる製品が多い
• 見た目がすっきりして、設置場所を選びやすい

新しく太陽光発電と蓄電池の導入を検討している方には、ハイブリッド型システムがおすすめです。

長期的に見れば、効率のよさがランニングコストの削減につながり、トータルでの費用対効果が高まります。

一方、すでに太陽光発電を設置済みの方は、既存のパワコンとの相性を確認したうえで、最適なシステムを選ぶようにしましょう。

併用するメリットと注意点

太陽光発電と蓄電池を併用することで、さまざまなメリットが得られます。

ただし、導入にあたっては費用面や運用面で注意すべきポイントもあります。

ここでは、とくに関心が高い**「非常用電源としての効果」と「導入コストと回収の考え方」**について、くわしく解説していきます。

これらを理解しておくことで、導入後に後悔しない選択ができるようになります。

非常用電源としての効果

太陽光発電と蓄電池を組み合わせる大きなメリットのひとつが、停電時でも電気を使えるという点です。

日本では、地震や台風、大雪などの自然災害が頻繁に発生し、それにともなう停電も珍しくありません。

2019年の台風15号では、千葉県を中心に最大約93万戸が停電し、完全復旧まで約2週間を要した地域もありました。

こうした長期停電のリスクにそなえるうえで、蓄電池付きの太陽光発電システムは非常に心強い存在となります。

太陽光発電だけを設置している場合、停電時には「自立運転モード」に切り替えることで電気を使用できます。

しかし、太陽が出ている時間帯にかぎられるうえ、使用できる電力も1,500W程度に制限されることがほとんどです。

これでは、エアコンやIHクッキングヒーターなどの消費電力が大きい家電は動かせません。

一方、蓄電池があれば、日中に発電した電気をためておいて夜間も使用できます。

さらに、蓄電池の種類によっては200V対応のものもあり、エアコンやエコキュートも稼働させられます。

停電時に使える電気の目安は、以下のとおりです。

蓄電池の容量	使用できる時間の目安（平均的な使用量の場合）
5kWh	約5〜8時間程度
10kWh	約12〜16時間程度
15kWh	約20〜24時間程度

※実際の使用時間は、接続する家電や使い方によって変動します。

停電時に優先して使いたい機器を事前に決めておくと、より効率的に電気を活用できます。

たとえば、以下のような機器への給電を想定しておくとよいでしょう。

• 冷蔵庫：食料品の保存のために最優先
• 照明：夜間の安全確保に必要
• スマートフォンの充電：情報収集や連絡手段として重要
• 医療機器：在宅医療を受けている方には欠かせない

また、全負荷型と特定負荷型という2つのタイプがあることも知っておきましょう。

特定負荷型は、あらかじめ決めた回路（コンセント）にだけ電気を供給するタイプです。

全負荷型は、家中のすべてのコンセントに電気を供給できるため、ふだんとほとんど変わらない生活が可能になります。

停電時のそなえとして蓄電池を重視する方は、全負荷型の蓄電池を選ぶことをおすすめします。

導入コストと回収の考え方

太陽光発電と蓄電池の導入を検討するうえで、費用面は最も気になるポイントのひとつでしょう。

初期費用がどれくらいかかり、何年で元が取れるのかを把握しておくことは、導入の判断材料として非常に重要です。

まず、初期費用の目安を確認しておきましょう。

設備	費用の目安（設置工事費込み）
太陽光発電（4〜5kW）	約100万〜150万円
蓄電池（10kWh程度）	約100万〜200万円
太陽光＋蓄電池セット	約200万〜350万円

※価格はメーカーや販売店、設置条件によって異なります。

一見すると高額に感じるかもしれませんが、国や自治体の補助金を活用することで、実質的な負担を軽減できます。

たとえば、東京都では蓄電池に対して最大で数十万円規模の補助が出るケースもあります。

お住まいの地域の補助金制度は、導入前に必ず確認しておきましょう。

次に、導入費用の回収について考えてみます。

費用回収の計算には、以下の要素が関係してきます。

• 電気代の削減額：自家消費によって買電量が減った分
• 売電収入：余剰電力を電力会社に売った分
• 補助金：国・自治体からの支援

たとえば、太陽光発電によって年間で約10万円の電気代削減ができ、売電収入が年間約3万円あるとします。

初期費用が250万円だとすると、約19年で費用を回収できる計算になります。

ただし、この計算には電気代の値上がりを考慮していません。

近年は電気料金が上昇傾向にあるため、自家消費の価値が年々高まっています。

電気代が上がれば上がるほど、太陽光発電と蓄電池を使って自家消費する経済的メリットは大きくなります。

費用回収を早めるためのポイントを以下にまとめます。

• 補助金を最大限活用する（申請期限に注意）
• 電気料金プランを見直す（時間帯別料金プランの活用）
• 自家消費率を高める（売電よりも自家消費を優先）
• 適切な容量を選ぶ（過剰な設備投資を避ける）
• 複数の業者から見積もりを取る（価格競争による値下げ効果）

また、注意点として蓄電池には寿命があることも忘れてはいけません。

一般的なリチウムイオン蓄電池の寿命は、10年から15年程度といわれています。

メーカー保証も10年から15年であることが多く、この期間内に費用を回収できるかどうかがひとつの目安になります。

さらに、設置後のメンテナンス費用も考慮しておく必要があります。

パワーコンディショナーは10年から15年程度で交換が必要になることがあり、交換費用は20万〜30万円程度が目安です。

このように、初期費用だけでなくランニングコストも含めたトータルの費用対効果を考えることが大切です。

とはいえ、電気代の削減、停電時のそなえ、環境への貢献といった金銭面以外の価値もあります。

これらを総合的に判断して、ご家庭に合った導入計画を立てることをおすすめします。

まとめ

この記事では、太陽光発電と蓄電池の基本的なしくみから、両者を組み合わせたときの電気の流れ、そして導入のメリットと注意点までを解説してきました。

あらためて、ポイントを整理しておきましょう。

蓄電池は電気をためて必要なときに使える設備で、太陽光発電と組み合わせることでその効果を最大限に引き出せます。

太陽光発電は太陽の光を電気に変換するしくみで、日中に発電した電力を家庭で使用したり、売電したりできます。

両者を連携させると、日中の余剰電力を蓄電池にためて夜間に使用するなど、電力の自家消費率を高めることが可能になります。

ハイブリッド型システムを選べば、変換効率が向上し、よりムダのない電力運用ができます。

また、蓄電池があれば停電時にも電気を使えるため、災害へのそなえとしても有効です。

導入コストは決して安くはありませんが、補助金の活用や電気代の削減によって、長期的には費用を回収できる可能性があります。

太陽光発電と蓄電池は、電気代の節約、環境への配慮、停電対策という3つのメリットを同時に実現できる設備です。

ご家庭のライフスタイルや将来の電気の使い方を考慮しながら、導入を検討してみてはいかがでしょうか。

まずは複数の業者から見積もりを取り、補助金の情報も調べたうえで、ご家庭に最適なシステムを選んでいただければと思います。